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首相激白、プーチン氏との“息詰まる攻防”

2016年12月19日 21:05
首相激白、プーチン氏との“息詰まる攻防”

 日露首脳会談を終えた安倍首相が日本テレビの単独インタビューに応じた。具体的な進展がなかった北方領土問題。安倍首相は、記者会見では語らなかったプーチン大統領との息詰まるやりとりを初めて明らかにした。


■プーチン大統領は信用できるか?

◇日本テレビ・伊佐治政治部長
――平和条約交渉に向け、両首脳が真摯な決意を表明ということが書かれていた。これは大きな意味を持つのか。

◇安倍首相
 そこが一番この声明で大きな意味を持つところであります。プーチン大統領も記者会見の中で『自分は経済協力だけ進めて、平和条約を後回しにしようなんてことは、考えていない』これははっきり言いましたね。『一番大切なことは平和条約である』ということもはっきり言った。これは初めてのことです。

 しかし、今回のプーチン大統領の来日を前に、安倍首相の発言は変化していた。今年9月、ウラジオストクで行われた日露首脳会談で安倍首相は「交渉を具体的に進めていく道筋が見えてきた」と意気込みを見せたが、その二か月後の首脳会談後には「大きな一歩は簡単ではない」と発言、一転して、交渉の難しさをにじませた。

◇伊佐治部長
――プーチン大統領に変化があったと受け止めたが。

◇安倍首相
 プーチン大統領の姿勢がですね。ウラジオストクとリマで変わったわけでは、これは全くありません。基本的にはソチ、そしてウラジオストク、リマ、今回の長門とだんだんだんだんですね、積み上がって前進をしてきていると思います。

◇伊佐治部長
――プーチン大統領のスタンスというものは信頼できるリーダーか。

◇安倍首相
 プーチン大統領の言い方は一貫していると私は思っています。ただ国民向けにですね、解説をするということは政治家ですから、当然あるんだろうと思いますが、私とプーチン大統領が交渉している中において、私に約束したことをたがえた、あるいはこうやっていこうと2人で決めたことを『やっぱり無理だ』となったことは一度もないわけでありますから。


■プーチン大統領との間に“溝”も

 さらに、来日に先立ち日本テレビなどのインタビューに応じたプーチン大統領は「日本との間に領土問題は存在しない」と発言していたが―

◇伊佐治部長
――今回の首脳会談で、領土問題は存在しないという発言はあったか。

◇安倍首相
 それは全くありません。

 一方で、安倍首相は領土問題をめぐり、プーチン大統領との間で考えに隔たりがあることも明らかにした。それは、プーチン大統領が交渉の基礎としている60年前の日ソ共同宣言についてだ。宣言には、平和条約が締結されれば、北方領土の歯舞群島と色丹島の2島を日本に引き渡すことが盛り込まれていた。

◇安倍首相
 (プーチン大統領は)あくまで56年(日ソ共同)宣言が起点であると。ここで決められたことは(歯舞・色丹の)2島についてのことであるけれども、しかしただ「主権を返すということは書いていない」というのがプーチン大統領、ロシア側の理解であります。その点で日本側と齟齬(そご)がまだもちろんあるわけです


■領土が返還後は米軍基地が?

 日本とロシアとの間で溝があることを認めた安倍首相。さらに、プーチン大統領は共同記者会見で、仮に北方領土が“返還”された場合、日米同盟の下、北方領土にアメリカ軍の影響が及ぶ可能性に懸念を示していた。

◇伊佐治部長
――やはり返還後の2島は日米同盟の下、米軍基地をおく可能性はあるか。

◇安倍首相
 そうした安全保障上のロシア側には懸念がありますから、そういう懸念も含めて、安全保障上の課題についても協議していきたいと思っています。でも、どういう協議をしているかということは、最終的な着地点にたどりつくまでは、つまびらかにすることは差し控えたい。

 米軍基地などの問題についてもロシアと話し合っていく姿勢を示した安倍首相。一方で、領土交渉は日本とロシアの2国間で最終決断すべき問題だと強調した。

◇安倍首相
 日本が主体的にですね。この問題については解決していく。第三国がこれに対して指図する立場にないと思います。


■プーチン大統領は義理を大切にする人

 また、プーチン大統領を評価するトランプ氏が、次期大統領になったことについては―

◇伊佐治部長
――トランプ政権になって、プーチン大統領がアメリカとの関係がよくなったので、日本の関係はそれほど無理しなくてもいいという臆測も出ているが。

◇安倍首相
 それはよくある説でありますけれども、プーチン大統領というのはですね。非常にクールに見えますが、大変義理を大切にする人物でもあるんですね。そこにプーチン大統領の一貫性もあると私は思っているんです。アメリカとうまくいきそうだから、もうあまり日本と仲良くする必要はないなという、単純な発想ではないと、そんな軽薄な発想では私はないと思いますね。


■対露制裁“日本の国益主張しなければ”

 首脳会談前から指摘されていた課題は他にもあった。ロシアによるクリミアの編入をめぐり、日本は他のG7諸国と協調して経済制裁をしているが、両国の接近が制裁の効力を弱めてしまうのではないかと懸念する声が出ている。

◇安倍首相
 日本にとってはアジア太平洋地域と比べれば(ウクライナ問題は)遠い地域の出来事です。その中でそれぞれの国は、当然自国の国益が一番大切ですね。しかし、その中において日本は日本の国益を主張しなければいけません。ですから、私はG7で日本はロシアと平和条約がない、隣国とないんですから、この異常な状況を私は終止符を打ちます。

 安倍首相はその上で、ロシア側に日本の立場について、理解を求めると同時にG7議長国として、ロシアに対する制裁に責任ある対応をとっていくと話した。

 しかし、アメリカのワシントンポストは「おととしにロシアがクリミアを編入して以来、初めてG7を訪問したがプーチン大統領の明らかな勝利だった」と厳しい見方を示した。今後の交渉はどう展開するのだろうか。


■「この道を進んでいくしかない」

◇伊佐治部長
――信頼醸成の先のゴールのイメージはしっかりあるのか。

◇安倍首相
 それは、私はこの道を進んでいくしかないと思います。それ以外の道があるんであれば教えていただきたい。原則を述べていた70年間、1ミリも動かなかったんですから。1ミリもですよ。今度初めて4島において、ロシア法でもないし、日本法でもない、新しい仕組みで、日本の企業とロシア側の人たちが一緒に経済活動を始められるようになった。

 安倍首相は今回合意した共同経済活動が、4島全てを対象としたことが領土問題の大きな前進だと強調した。

◇安倍首相
 考えてみていただきたいんですが、そこに住んでるみなさんが大反対してできると思いますか。できないんですよそれは!島民が全部反対して、強引にしたって、大反対運動を展開してですね。結局それがあればロシア側も踏み出せませんし、そもそもたとえそれが了解したとしても、全くうまくいかない。新たな紛争の芽になってしまうわけですから。

 今回の首脳会談を北方領土問題の解決につなげることはできるのだろうか。