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“東京ずるい”で奮起「980円予備校」2

2016年12月16日 15:39
“東京ずるい”で奮起「980円予備校」2

 「リクルートマーケティングパートナーズ」社長・山口文洋氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。2つ目のキーワードは「ロマンとそろばん、人生を変えた15分のプレゼンとは」―大企業の経営陣が居並ぶ中、山口氏は何を語ったのか。


■人生を変えたプレゼンテーション

――制限時間15分の最終審査は渾身のプレゼンテーションだったそうなんですが、どういったプレゼンだったのか、今からパワーポイント(プレゼンテーション用のパソコンソフト)を交えながら、お聞きしていきたいと思います。プレゼンはどういったものだったのでしょうか。

 リクルートの経営陣に対して、約15分のパワーポイントのプレゼンテーションと残り15分の質疑応答だけで、残った案件の中でグランプリが選ばれるというコンテストで人生をかけて勝負しました。

――15分というのはすごく短いですよね。

 そうですね。あっという間なので、その15分の中に「ビジネスで儲かりますよ」というだけではなくて、もうひとつロマンですね。これをやることによってどうやって社会を変えたいのか、もしくはリクルートという会社がやるべきだという意義も詰めたプレゼンをしました。


■まず、ロマンを語った

――さてこちらが、ロマンの部分の画面ですが―「私たちは教育を開放し、2020年、この国を世界に誇れる国にしたい」とあります。

 これは私が、冒頭にプレゼンで言ったんですが、私はやっぱり、ただの批評家ではなくて、原体験で、多くのお子さんに、保護者に、先生に会って、日本の教育環境格差を見てきたんですと。みんな「当たり前」だと思っている、「日本は平等だっていう世界」は少しずつ変わり始めています、貧富の差が広がってますよと。

 僕は、教育だけが人生を変えられる大きなチャンスだと思っていて、そこにすら格差が広がっているこの日本をどうにか変えたいんだと、というロマンをまず語りました。


■“勉強をダウンロードする”という発想

――では、中身もちょっと見ていきたいと思います。iPod的な世界観とは、どういうことですか。

※画面上には「いつでもどこでも利用できる利便性の提供」というタイトルのシートがあり、説明には「スマホ・タブレットと連携し、高校生が普段利用しているiPodと同じ世界観を共有」とある。さらに「iPod的な世界観」「利用イメージ」というキャプションとともに、端末・ソフトのイメージ画像や生徒が勉強する写真が挿入されている。

 そのロマンをどういったサービスで変えたいか、ちょうど5~6年前にみんながiPhoneを持ち始めて、みんなこのiPod、もしくはiTunesで、曲を買って(ダウンロードして)、そして聴いていると。こういうのが当たり前になった時代の時に、たぶん曲をダウンロードするだけじゃなくて、動画をダウンロードするような時代も来るんだろうなと。そして曲のようにいつでもどこでも勉強できる―そんな時代が来るんじゃないかなっていうことで、iPodやiTunesの勉強版という形のサービスを考えつきましたと。


■そして、ビジネスの形を見せる

――先読みされたことが本当に事実となりましたね。では次のものも見ていきます。

※画面上には「mecha-studyのブルーオーシャン戦略」というタイトルに、「圧倒的な低価格は、『非予備校通塾層』の取込を可能にし、『いつでもどこでも』の利便性は、『併用』という新規事業を掘り起こす」という説明がある。

 このサービスの、ロマンも言って、具体的なサービスのイメージも湧いたと思うんですが、最後にどうやってそのロマンをビジネスとして成り立たせるのかというのをこの1枚で語っております。

 ひとつ我々のサービスは、生の授業はありません、生徒たちが競い合う教室とか自習室は持っていません、ただ、我々のこのオンラインサービスはいつでもカリスマ先生の授業を品質高く見られますよ、さらに値段はめちゃめちゃ安いですよ、と。

 また、新たな価値として、(塾予備校はこの時間に通わなきゃいけないのが)、いつでもどこでも見られますよとか、値段を圧倒的に安くすることによって、塾や予備校に行ってない子供たちに対しても、新しい新規の事業を掘り起こしますよといったビジネス論を語りました。今までにない価値を提供して、新しい市場でビジネスができるかもしれないっていう可能性を感じていただいたと思います。