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たたいて救える小さな命 「猫バンバン」

2016年12月7日 21:18
たたいて救える小さな命 「猫バンバン」

 止まっている車の隙間に入った猫に気づかずにエンジンをかけてしまい、猫が機械に巻き込まれて死んでしまうことがある。そこで去年、自動車メーカーの日産が車に乗る前に車体をバンバンとたたき、猫に注意を呼びかける「猫バンバン」プロジェクトを始めた。


■なぜ車の隙間に猫が?

 この「猫バンバン」プロジェクトによると、車体をバンバンとたたいたところ、14%、実に7人に1人が車の下やボンネットの上などに猫がいたと回答したという。

 今年6月、福岡で撮影された映像には、車の中から猫の声が聞こえる様子が。実は、猫がエンジンルームに入り込んでしまったのだ。JAF(=日本自動車連盟)が救助に当たり、10分後、生後間もない子猫がようやく救出された。かわいそうなことに、こうした車の隙間に入り込んでしまう子猫の被害が特に多いということだ。

 帝京科学大学アニマルサイエンス学科の加隈良枝准教授によると、猫は警戒心の強い動物で、人目につかない狭いところや囲われた空間を好むそうだ。さらに、冬になると寒さをしのぐために、暖かい場所を求めて車の隙間に入り込んでしまうということだ。

 実際、JAFによると、冬場になると車の隙間に入り込んでしまった猫の救出依頼が全国的に増えるそうだ。それだけでなく、猫が巻き込まれればエンジンベルトが壊れるなど、車の故障の原因にもなっているという。


■きっかけは“お客さんの声”

 日産によると、元々は豆知識として注意を呼びかけていたところ、「この動きをもっと広めて欲しい」といったお客さんの声が寄せられ、それに突き動かされる形でこの「猫バンバン」プロジェクトが誕生したということだ。

 「猫バンバン」プロジェクトでは、こうした動きを広げるため、「猫バンバン」を呼びかける猫のステッカーを作ったということだ。シールとマグネットの2種類があるが、大変人気でなかなか手に入らないそうだ。


■“たたく”以外に猫を救う方法は?

 大手カー用品店などに問い合わせてみたところ、猫のふんや尿などの被害を防ぐためのスプレーやマットなどの商品はあっても、猫が車の隙間に入り込むのを防ぐための商品というのは取り扱っていないということだ。

 車の構造上、熱がこもるのを防いだり、排水したりしないといけないので、車体の下を完全に塞ぐのは難しいからだ。なので、最も手軽で効果的な方法が、やはり車に乗る前に車体をたたく事だということだ。


■ネットでも広がりが

 この「猫バンバン」は大きな広がりをみせていて、インターネット上では「自分もやってみた」と投稿する人が数多くいるということだ。

 また、SNSで話題になっている写真がある。「寒くなってきました。ネコがエンジンルームに忍び込む時期です。」という文章とともに、かわいらしい猫のイラストが描かれた写真がアップされている。

 実は、これはMKタクシーの公式ツイッターが呼びかけたものだ。あまりのかわいさに人気に火が付いて、先月24日に公開されてから既に400万回以上も見られているそうだ。


■2秒の思いやり

 車に乗る前、たった2秒、車体をたたくという思いやりで救える小さな命がある。これからの年末年始、家族と車で出かける機会も多い。これを期に、車に乗る前の習慣にしてみてはいかがだろうか?