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ノークラブデー導入へ「地域部活」に注目も

2016年12月5日 19:32
ノークラブデー導入へ「地域部活」に注目も

 先月、大阪府は府立高校などで部活動を自粛する「ノークラブデー」を週に1日以上設けることを発表した。来年1月から試行し、4月からは完全実施される。そんな中、プロや地域がサポートする部活が注目されている。どんなメリットがあるのだろうか。


■「土日にも休みがない」

 部活自粛の理由は、部活には基本的に顧問の教師がつくため、そうした教師の負担を減らすためだ。実は、文科省でも「部活をしない日を設けよう」と来年度中に公立、私立の中学や高校を対象にしたガイドラインを定めようとしている。

 それだけ部活を負担に感じる先生がいるということなのだろうか。実際に、公立中学校に勤める教師にどんなスケジュールで働いているのか聞いてみた。

 平日は朝8時から登校指導をし、授業、そしてそのあと午後6時まで部活をし、部活が終わった後、担当教科や学級のための準備を夜8時まで行う。土日も両日、午前8時半から午後1時など半日部活動をしているという。

 部活にどの程度力を入れているかは学校にもよるが、これだと休みがないことになる。この教師の場合、基本的に土日に部活がないのはテスト週間だけだという。


■「部活指導が負担」69.5%

 去年、全国の中学校の教師を対象に、仕事の悩みや不安を聞いた調査では以下のような回答があった。

授業の準備時間が不足 84.4%
指導が必要な子供が増加 80.2%
ゆとりが無い 75.3%
部活指導が負担 69.5%

 部活の問題点について考える教師の団体には「部活の激務で心身を壊し、退職した」「年間8日程しか休めなかった」「このまま死にたくない。つらい」など4000件近い教師たちの声が寄せられているという。

 また、「若い頃は部活を熱心に指導していた」が、子どもが生まれて「家庭を大事にしたい、育児にも関わりたい」という思いから、部活による長時間勤務を避けたい、という人もいる。

 先生も家庭を大事にしたい、というのはもっともだ。ただ、部活に真剣に取り組んでいて、もっと練習したいという生徒も中にはいる。そうした生徒のために取り組む自治体もある。


■「プロ」「地域」が部活に参加

 東京都杉並区の中学校のソフトテニス部の活動で教えているのは教師ではなく、プロのコーチだ。杉並区では部活の指導を外部委託できるようにした。実際に生徒は「部活動の技術指導が的確になってうまくなった」、先生も「負担が減った」と双方がメリットを感じているという。

 また、プロに任せるだけでなく、地域の人が関わろうという取り組みもある。静岡県磐田市が5月に始めたのは「地域部活」。自分の通う中学校に希望する部活がない生徒が市内各地から集まり、地元の元スポーツ選手や体育協会の職員などに週4日、指導を受けている。しっかりとした指導を求める生徒のニーズにも応えられ、なおかつ地域とのつながりも深められるのではないかと期待されている。


■教師の「負担減少≠熱意減少」ではない

 こうした試みのメリットは、教師の健康や家庭への影響だけではない。教育評論家の石川幸夫さんは「いじめといった子どもたちのSOSを見逃さないためにも、先生たちに心の余裕がないといけない」と指摘しており、教師の負担軽減は子どもたちのためにも必要、と話す。教師は、子供たちのケアや授業の準備など、部活以外にも大切な仕事がたくさんある。

 今回のポイントは「教師の負担減≠熱意減」。このところワークライフ・バランスが叫ばれているが、子ども相手のこととなると、つい時間を長くかけることが熱意の表れ、と教師の中にも無理してしまう人がいるようだ。

 しかし、教師だけでなく、保護者や専門の機関、地域など、子どもの周りにいる人たちすべてがうまく関わることで、教師の負担も減らすことは、むしろ、子どもたちにも最適な環境を用意してあげることにつながるのではないだろうか。