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“もう一つのショック”に揺れるキューバ

2016年11月30日 18:40
“もう一つのショック”に揺れるキューバ

 キューバでは29日、フィデル・カストロ前国家評議会議長の大規模な追悼式典が開かれ、約100万人が訪れたとみられている。カリスマ的指導者の死去に加え、キューバは今、もう一つのショックに揺れている。現地ハバナから平本典昭記者が報告する。

 カストロ前議長が死去してから5日目。最後の別れを告げようと、ハバナ中心部の「革命広場」には多くの人が集まった。会場からは拍手が湧き、フィデル前議長の弟、ラウル・カストロ議長が挨拶を行った。

 ラウル・カストロ議長「フィデル(前議長)は人生のすべてを団結にささげた」

 式典の参加者「世界各地からこれだけの人が集まってくれたのは、フィデル・カストロの考えが根付いていることの証しだと思います」

 カリスマ的指導者を失い、キューバ国民の多くは悲しみに包まれた。

 さらに、キューバは今「もう一つのショック」に揺れている。

 タクシー運転手をつとめるウンベルトさんは、自慢の赤いアメリカ製のシボレーで、主に観光客を相手に街を案内しているという。今、気になるのは、隣の国のあの人のことだという。

 タクシー運転手・ウンベルトさん「トランプ氏は日によって違うことを言う」

 キューバは去年、オバマ大統領主導でアメリカと国交を正常化した。経済効果への期待が高まっていた矢先、路線変更を示唆するアメリカ次期大統領・トランプ氏への警戒感が広がっている。

 トランプ氏(今年9月)「カストロ政権が我々の要求を満たさないなら、オバマ大統領が与えたすべての譲歩を無効にする」

 他のタクシー運転手も「この国の観光業にトランプの考え方次第で悪影響が及ぶかも」と話す。

 さらに民間の宿泊施設でも。

 オーナーのルイスさんが「リピーターが多いのが特徴」と話す宿泊施設では、2014年に営業を始めてからアメリカ人や日本人などの旅行客が多く訪れているという。予約が殺到していることを受け、部屋を2つ増築する予定だが──。

 オーナー・ルイスさん「トランプ氏はオバマ大統領がやってきた政策をやめ、観光客が減るかもしれないですね」

 ルイスさんは、また昔に後戻りするのではないかと危惧している。

 カリスマ指導者が死去した喪失感と、隣の国アメリカで誕生したトランプ政権への不安感。キューバは今ダブルショックに揺れている。