「年金カット」批判の野党、過去に成功体験
年金支給額の上昇を抑える新たなルールを盛り込んだ「年金制度改革法案」。衆議院本会議で29日、与党などの賛成多数で可決された。野党・民進党は「年金カット法案」だとして猛反発。その背景には過去の“成功体験”があった。
■「年金制度改革法案」で激しい論戦
29日の衆議院本会議で、年金制度改革法案をめぐり与野党の激しい論戦が繰り広げられた。
民進党・郡和子議員「安倍総理が掲げる1億総活躍とは、年金はカット、だから高齢者も障害者も死ぬまで働けといわんばかりに、冷たく突き放す意味があったのですね」
自民党・三ツ林裕巳議員「厳しい政策でも勇気をもって進めるのが、責任ある政治です。対案すら決められない政党に、批判される筋合いはありません」
■物価↑でも賃金↓なら年金もダウン
民進党など野党4党は29日朝、塩崎厚生労働相の不信任決議案などを提出。民進党は、これまで、年金制度改革法案が高齢者の負担を増やす“年金カット法案”だと批判していた。これに対し政府与党は、現役世代の負担を減らすための法案であり、民進党は批判ばかりで対案を示していないなどと主張していた。
公的年金の額は、賃金や物価の変動に合わせて改定する仕組みになっている。これまでは、現役世代の賃金が下がっていても、物価が上がっていれば年金額は据え置かれてきた。しかし、改正案では、物価が上昇していても、賃金が下がれば、年金額も引き下げられることになる。こうすることで、今の現役世代が将来受け取る年金の水準を保とうというのだ。
■年金問題、民主党時代に成功体験
民進党は、この法案を、政府与党を追及する本丸と位置づけ攻勢を強めている。その背景には、“過去の成功体験”があった。
民主党時代の2004年、小泉内閣の閣僚に年金未納が相次いで発覚。「未納三兄弟」などと追及し、その年の参院選挙で民主党は自民党に獲得議席で勝利した。さらに、2007年、第一次安倍政権では、誰のモノか分からない年金記録が約5000万件あることが発覚。「消えた年金」として民主党が追及した。その後の参院選挙でも勝利し、安倍首相の退陣につながった。
そして29日夕方、衆議院本会議で採決が行われ、与党などの賛成多数で、年金制度改革法案が可決。与党側は、来月14日まで会期を延長し、この法案の成立を目指す。