箔一・浅野氏「夢から逃げない」経営術 4
株式会社「箔一」の代表取締役会長・浅野邦子氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。4つ目のキーワードは「『辞めてやる』息子は会議室を出て行った。事業承継を成功させる秘けつとは」。あえて演技をしてまで2代目に厳しく接したという浅野氏、その経験を語る。
■息子を集中攻撃
――さきほども話に出ました、2009年に息子さんに社長を引き継いだそうですが、息子さんに対してはどんなスタンスで経営を教えられたのでしょうか。
私が現役で元気なうちに、2代目は継承しようと前から思っていました。親の力が弱ってから継承したって、世間ではやはりね外敵が多くなると思いましたから。
やはり息子っていうのは、やっぱり例えば息子の時代に潰しても、息子やから諦められる。それから、親がもし潰しても、まあ親やからしゃあないと、まあこういう身内の情なんかがありますけど、それにはやっぱり甘えちゃいけない。
会議の席でも息子の器量とその側近ですね。どういう形で息子に味方をしてくれるだろうと。あえて、私は演技しましたね。厳しいこと言って、そして息子がどういう反応するかとか、まあ、最初はいじめがひどかったんですよ。すごく私も厳しくやりましたから。私の場合は世間にものすごくいじめられましたけど、逆に言うと息子の場合は、私ぐらいいじめにあってもいいのかなと思って(笑)。
厳しくやりましたけど、やはり最初は辛かったでしょう。一番守ってくれる親が、一番厳しいことをやるんですから。だけどもそれに打ち勝って、どんどん私よりか力をつけていきましたね。
■創業者と2代目の違い
――今でも「会長と社長」というのはどういう関係ですか。
やっぱりいい意味でも悪い意味でもライバルですね。やっぱり私も息子にも負けたら嫌やと思いますし、やはり私にとっては一番負けたくない存在。それと私に一番ほめてほしいんだと思います。
でも、まあ心の中では、はっきり言って私より素晴らしい経営者になっています。しかし、やっぱり創業の時のやり方と、今の組織論でいく2代目さんとの経営とは、やっぱりちょっと違っています。でも目指すものは全部一緒です。
だから心の中では「ありがとうね」って、私が経団連の仕事をのんびりやれるのも、息子が頑張ってくれるからって―心の中で思ってるんですが、ほめられないのが親子の関係なんです(笑)。