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箔一・浅野氏「夢から逃げない」経営術 2

2016年11月17日 17:56
箔一・浅野氏「夢から逃げない」経営術 2

 株式会社「箔一」の代表取締役会長・浅野邦子氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。2つ目のキーワードは「手に入らないなら自分たちで作ろう。あぶらとり紙で特許を取得、会社は急成長」。ニーズがあるにもかかわらず「あぶらとり紙」の製品化には多くの困難があった。浅野氏はどう克服したのか。

■「あぶらとり紙を作る」逆転の製法

――女性はよく知っているあぶらとり紙ですよね。お化粧は、夕方になると崩れてしまいますから、化粧直しのときとかに使うものなんですが、昔はこういうふうに商品として和紙のあぶらとり紙というのが売っていませんでした。そんな時に、目をつけられたということですが、どのような経緯があったのですか?

 工芸品を売っていますと、地方から「こんな工芸品いらんから、あぶらとり紙の化粧紙を持ってきてくれ」と。当時は、金箔(きんぱく)を打ちふるした後の、紙があぶらとりになっていたんです。

 でも、親方、子方のラインがきちっと決まっていますから、私どものような新しいこういう事業してるものはそのラインがないんです。そうすると売っていただけない。しかし、需要と供給のバランスで欲しいと言われているのなら、逆にしようと。金箔を打ちふるした後があぶらとり紙になるんだったら、あぶらとり紙を目的とした金箔の内紙を作ろうと逆から考えたんです。

 それから、うち古した後のあぶらとり紙というのは、色が汚いんです。あぶらが出るのは若いお嬢さんですから、そんな若いお嬢さんが汚い紙を使うわけないと。そうすると、製品化するのにはちゃんと清潔感のある化粧紙を作らなきゃいけない。そして流通のなかにのせて、汎用性を持たせようというのが一番のスタートですね。

■同業者の批判も乗り越え―

――金箔を挟んで打ちつけて作る製法ではなく、はじめからあぶらとり紙を作る目的で、ということですね。

 金箔をたたくのと同じ1トンの重さでたたきますから、同じ技法です。だけど目的があぶらとりを目的としたものです。

――何トンものもので何百回もたたくから、紙が凝縮されて油を吸いやすくなるということなんですよね。そのように作られて、同業者からの反応というのはどうでしたか。

 ありましたよ、全然、打ちふるした伝統の紙と違って目的が、あぶらとりですから。「もうそんなの偽物や」とやはりいろいろ言われました。

 だけどもですね。目的が私は化粧紙として売りたかったですから、めげなかったですね。

■「付加価値」でライバルと勝負

――そして食用の金箔も開発されていて「字」をくり抜いたり、「模様」をくり抜いたりしたかわいらしい金箔なんですが、これも浅野さんの発明ですよね。これはどういったきっかけからなのでしょうか。

 お酒とか料理に入っている金箔は、それはもう職人さんがたくさんいるから、箔屋さんならどこでも作れます。しかし、せっかくとってきた大きな注文も大手にはかないません。必ずひっくり返されていました。しかしグラムでは負けるけど、1個いくらとか、1枚いくらというような製品として作れないかなと思って作ったのがこれなんです。

 例えば、薬を飲むときオブラートに包むじゃないですか。あれは胃のなかに入ると溶けてしまう。それを1万分の1の箔とあわせれば手で持てるんです。そうすれば形が抜けるのではと。

――価格競争に巻き込まれず、付加価値を付けてちょっと高くても消費者に買ってもらえるようなものっていう工夫ですよね。

 やはり、違う角度から製品作りをしていましたね。