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全ての加工食品に「原産地表示」その背景

2016年11月11日 17:52
全ての加工食品に「原産地表示」その背景

■全ての加工食品に原産地表示

 私たちが普段使う食品の多くは、何らかの加工が施されている。しょうゆやみそなどの調味料の他、ハムなどの肉加工品、冷凍食品、レトルト食品、お菓子、清涼飲料水など、全て加工食品だ。

 これらに含まれる原材料の原産地を知りたいと思った場合、貼られているラベルを見る。実際、消費者庁の調査でも76.8%の人がラベルなどに書かれた原材料の原産地名を購入の参考にすると答えている。

 実はいま、こうしたラベルによる原産地の表示について、新たなルールを作る動きがある。消費者庁と農林水産省は今月2日、有識者検討会を開き、加工食品に使われている原材料の原産地表示制度について改正案を大筋で了承した。

 現在、原産地の表示は一部の品目にしか義務付けられていないが、今後、原則的に全ての加工食品に表示義務が広がることになる。

 こうした動きの背景には、外国産の輸入が増える中で消費者が安心して買えるようにしようという思いがある。また、国産の農産物か外国産かを分かるようにすることで、国産品の消費拡大につなげる狙いもある。


■どのように変わる?

 「ソーセージ」を例に挙げる。パッケージのラベルには原材料として、「豚肉」「豚脂肪」などが明記されている。

 新ルール案では、原材料のうちで最も重い「豚肉」について、原産地を表示する義務が生じる。例えば「豚肉(カナダ)」と書くようになる。複数の国の「豚肉」を使用している場合は、その重さの順に「カナダ、アメリカ」と国名を表記する。

 ただ、はっきりと原産地を書けないケースも多い。トマトを原材料とするトマトケチャップを例に挙げる。

 食品メーカーは、アメリカ、スペイン、チリなど様々な国からトマトを輸入している。メーカーは天候や季節によって調達先を頻繁に切り替えるのが一般的だが、調達先を変える度にラベルを作り替えることになれば大変なコストがかかる。

 そこで新しいルール案には、例外の表示も認められている。その1つが「アメリカまたはスペインまたはチリ」といったように「または」という言葉で国名をつなぐ表示だ。

 これは、過去の一定期間、今回のケースでは「2015年の取り扱い実績」の順番では、アメリカ産が占める重量が1番で、続いてスペイン産、チリ産の順だという。

 過去の実績から、使用の可能性がある国名を並べた表示なので、不作の影響などでこれらの国の原材料を使っていない時期があっても良いわけだ。ただ、ルールの意味を知らないと、混乱する場合もありそうだ。

 例外の表示法は、他にもある。「輸入」という表示だ。「輸入」は、3つ以上の外国の産地表示をまとめて表示するものだ。

 さらに、混乱を招きそうな表記もある。それは「輸入または国産」。これは、一定の期間を通じてみると「輸入」国数が3か国以上で、「国産」も使用しているケースだ。そして、先に書いてある「輸入」が「国産」よりも使う割合が高いということだが、一見しただけでは理解に苦しむだろう。


――何か打つ手はあるのか。

 今回のポイントは「他の手段と合わせて」。新しい表示方法は複雑で分かりづらい面があるが、ラベルだけで全てを伝えるのは難しい面がある。

 そこで、例えばインターネットのホームページ上などに、より詳しい情報を載せておくことで、消費者の誤解を少なくする努力も必要だ。ホームページなら原産地が頻繁に変わる場合でも、随時、新しい情報をアップデートできるので、ぜひ工夫してほしい。

 消費者庁は「早ければ来年にも食品表示の基準を改正したい」としている。