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“韓国の失敗避けたい”TPP成立急ぐ理由

2016年11月1日 18:54
“韓国の失敗避けたい”TPP成立急ぐ理由

 今国会最大の焦点、TPP(=環太平洋経済連携協定)の承認案は、4日に衆議院を通過する見通しとなった。政府・与党は、なぜTPP承認案の成立を急いでいるのか。日本テレビ報道局・政治部の原聡子記者が解説する。


――日本政府はTPP承認案を何としてでも今の国会中に成立させたい考えですね。

 そうです。日本政府は今月30日の会期末までに成立させたいが、その理由は、来週のアメリカ大統領選挙にある。TPPを進めてきたオバマ大統領の任期が、来年の1月で終了してしまう。TPPは少なくともアメリカが承認しないと発効しない仕組みのため、アメリカに承認を促すため、まず先陣を切って日本が承認しようというわけだ。


――確かにオバマ大統領は、TPPの立役者だが、次の大統領じゃダメなのか。

 ダメなんです。実は大統領候補が2人ともTPPに反対の姿勢を表明している。共和党のトランプ氏はTPP脱退表明を公約にしており、TPPはアメリカの製造業などに大打撃になると述べている。一方、ヒラリー候補は元々、推進派だったが、大統領選に出馬後、反対に転じた。選挙対策の為にアメリカの雇用と労働者を守るとアピールし、TPPの再交渉を求めるとしている。


――「再交渉」というのはどういうことか?

 つまり、もう一度交渉をしてアメリカにとって良い条件を引き出したいということになる。安倍政権が承認を急ぐ理由は、アメリカに承認を促すと共に、もう一つ、この再交渉になるのを避けたいという狙いがある。

 というのも実はお隣・韓国で似たような例があった。2007年、アメリカと韓国がFTA(=自由貿易協定)をブッシュ政権下で妥結した。しかしその後、韓国議会で野党が猛烈に反発し、承認が進まなかった間にアメリカでは大統領選挙が行われた。

 選挙の結果、米韓FTAの再交渉を公約したオバマ政権が誕生。結果、オバマ政権下で再交渉となり、韓国にとってさらに不利な内容になったと言われている。日本は、この韓国の二の舞いにはなりたくないという訳だ。


――しかしTPP参加国は12か国。再交渉となると大変ではないか。

 そうです。実際、アメリカ以外の11か国全てが現在、絶対に再交渉には応じないと言っており、経済規模の大きい日本のリーダーシップに期待している。日本でいち早く承認して、その後、アメリカとどう交渉していくのか、外交手腕が問われることになる。