「殺処分」ゼロを目指して 様々な取り組み
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。5日のテーマは「『殺処分』ゼロへ」。日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。
10月4日は「世界動物の日」。毎年、世界各地で動物愛護・保護のための活動が行われている。
■“殺処分”とは
“殺処分”とはどういうことか――県や市などの自治体は事情があって飼えなくなった犬や猫などを、動物愛護管理センターなどで引き取っているが、元の飼い主や新しい飼い主への引き渡しが難しいような場合に、やむを得ず殺してしまうことを言う。
ここ数年は減少しているが、日本では2015年度、犬は約1万6000匹が、猫は6万7000匹あまりが殺処分されている。いま、こうした殺処分を減らすための動きが広がっている。
■“ふるさと納税”を利用したプロジェクト
4日、動物保護のための活動などを行うNPO法人“ピースウィンズ・ジャパン”は、ふるさと納税の情報サイトを運営する会社と、「2020年までに日本の犬の殺処分をゼロにする」というプロジェクトを立ち上げると発表した。
このNPO法人は広島県神石高原町で活動しているが、この町への“ふるさと納税”を利用して活動資金10億円を集めようとしている。この仕組みを使えば、ふるさと納税の範囲内であれば、NPO法人へ直接寄付するよりも税金の控除が多いとしている。
■“殺処分ゼロ”神奈川の取り組み
こうしたさまざまな取り組みが行われているが、神奈川県は、全国に先駆けて犬猫の殺処分数がゼロになったと発表している。神奈川県動物保護センターでは、犬の殺処分が2013年度から3年連続でゼロになり、猫の殺処分も2年連続でゼロが続いているということだ。
神奈川県では、保護センターにいる犬や猫の引き取り手を探すボランティアを県外からも受け入れているほか、ボランティア団体などが主催する犬や猫の“譲渡会”など、ボランティアの活動を県が積極的に広報し、両者が“一緒に問題を解決していく”姿勢を明確に打ち出している。
さらに、“引き取り手数料の増額”を行っている。動物の引き取りにかかる手数料は、これまで1匹あたり2000円だったが、2013年から4000円と、倍に増額。安易な引き取りの依頼がないよう飼い主への抑止力とした。
そして、“情報共有”。犬や猫を探している飼い主のために、飼い主がわからない犬や猫の情報を警察の落とし物検索システムや隣の自治体などとも共有し、ペットの飼い主がより探しやすい環境を整備した。
ただ、殺処分ゼロに取り組んでいる人たちにも限界がある。日本動物福祉協会の町屋さんはこう指摘する。
「自治体によっては、ボランティアの人たちがセンターから1匹でも多く救おうと、飼育できる限度を超えて引き取ってしまうケースがある。そうすると、結果的に動物たちが劣悪な環境に置かれてしまう」
■“やむを得ず”は勝手な言い訳?
誰も犬や猫の殺処分を良いことだと思っている人はいないだろう。しかし、引っ越しで「やむを得ず」、手に負えなくなって「やむを得ず」手放してはいないだろうか。また、業者も思ったように売れなかったので「やむを得ず」と思っていないだろうか?
この「やむを得ず」が人間の勝手な言い訳になっていないか、本当に最後の手段なのか、ひとりひとりがもう一度考える必要があるのではないだろうか。