「心配でも子供信用して」大隅さん生出演で
ノーベル賞の受賞決定から一夜。東京工業大学の大隅良典栄誉教授(71)が、日本テレビ「news every.」に生出演し、今の心境を語った。子どもを持つ親に対しては「子供を信用して、好きにやらせてあげて欲しい」とアドバイスをする場面も。
――改めていまのお気持ちは?
まだ、ずっとインタビューを受けていたりして、実感がわかないというのが正直な感想です。少し疲れてきたなあと(笑)。
――3時間しか寝ていらっしゃらないというのは本当でしょうか
そうですね。大丈夫です。
――大隅さんは、とてもお酒好きと聞いていますが、こんなエピソードを伺っていますのでVTRをご覧下さい。
VTR中の妻・萬里子さん「楽しくみなさんと、(お酒を)飲んじゃうんじゃないですかね。私は『人についで自分にはつぎなさんな』って言うんですけど、人についで自分でつぐんですよ(笑)」「(Q:印象に残るエピソードは?)悪いエピソードはいっぱいあるんですけど(笑)。酔っ払って(転んで)ケガしたり」
VTR中の兄・和雄さん「酔っ払って帰るとか。途中で駅で寝込んでしまうとか、それは最近でもそういう事はあるらしいけど」
――大隅さん、最近でも駅で寝込むことがあったんですか?
そんなことはないです(笑)。私は、日本酒を飲みすぎるとつぶれるみたいで。醜態を演じたのは、みんな日本酒ですね、大好きなんですけど」
――受賞決定後は、まだお酒を飲む機会はないということでしょうか?
ありません。今日にでも思い切って飲みたいと思います。
――奥様の萬里子さんとは、学生結婚ということで、きょうも2人で会見に出ておられましたが、会見以外でどんな話をされましたか?
昨日、1分ぐらい「決まったよ」っていう話と、今朝、5時ぐらいにちょっとお互いに「どうなってんの?」って話をしたぐらいで(笑)、取りたてて話をしていません」
――「人がやらないことをやろう」というお考えで、研究を続けてこられたということですが、そういった考えの原点は?
人がたくさんやってることは大変で、1人自分でやってるほうが、よっぽど新しいことが見つかる。そう私は思っているので、なんか逃げ回って、人のやらないこと探したいというのではなくて、人がよってたかってやっているのは、誰かに任せればいいやというのがサイエンスの王道ではないかと思っています。
もちろん、人がやってないことは、なかなか評価してもらえないとか、わかってもらえないということはあって、私が液胞というのを始めた頃も「あいつなにやっているんだろう」とたくさんの人が思ったと思いますが、そこを自分が面白いんだと思いさえすれば、あまり雑音は気にしないでいいんじゃないかと思います。
――地道だと言われている基礎研究に大きな光をさらに当てたのではないでしょうか?
そうであったら大変うれしい。私のように本当に基礎の生物学をやってきた人間が、こういう賞をいただいたってことが、若い人たちの励みになってくれれば―それが私の最高の幸せだと思っています。
――今回、研究室のメンバーからも祝福の声が届いていますので、VTRを一緒にご覧下さい。
VTR中の研究室のメンバー「私の目から見ると、楽しそうに研究の話をされたり、すごく楽しそうに見える」「先生なら取るだろうなと思っていたので、とてもうれしかったです」
VTR中の大学院修士2年生「本当におめでとうございますというひと言です。これからも大変かと思いますけど、お酒は飲み過ぎないようにして、体調にご自愛して、研究をこれからもぜひ楽しんでいただけたらと思います」
――大隅さんのような研究者になりたいという若い方も増えると思います。
私の原点は、自分で見つけた現象にあったと思うので、本や論文の中からでなくて、私たちは自然の中に、問題はいくらでも見つかるんだよっていうことを、若い人にはぜひ考えて欲しいなと思っています。
もちろん、現象ばかりを掘り起こしてもしょうがないこともあるんですが、そこからいつも変えられるものが自分にあれば、少々うまくいかなくても「これが知りたい」というのがあれば、サイエンスは楽しく続けられるんじゃないかと思います。
――大隅さんは、小学生の理科の教科書作りにも10年近く携わってこられたということですが、小さな子どもたちが科学を学ぶ上では、どんなことが大切だと考えておられますか。
子供って、素直に「なぜ?」って質問が発せられることが、子供の特権だと思います。でも、だんだん年を重ねていくと、そういうことを「まあこんなもんだろう」と思ってしまう。私はそういう意味で、研究者は子供心を忘れないものであると思います。
「なんで」というものは問いかけると山ほどあって、身近なところに、いろんな疑問点を見つけて、それを大事に育ててほしいというのが、特に小さい子供たちに心がけてもらいたいことです。
――そういった子供たちに教える立場の先生や、あるいは親は、どんなことを心がけたらいいでしょうか?
私もあまり親からどうこうと言われたことはなかったので、もちろん、子供って親は心配なのはわかるのですが、できるだけ子供を信用して、好きにやらせてあげて欲しいなと私は思います。
――最後に。受賞後、最初の一杯はどのアルコール酵母に身をゆだねられますか?
とにかく、なんか疲れたので、ビールを飲もうかと思います(笑)。