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ベジタリア小池氏「科学で変える農業」3

2016年9月29日 18:34
ベジタリア小池氏「科学で変える農業」3

 ベジタリア代表取締役社長・小池聡氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。3つ目のキーワードは「説明できない経験より、科学に頼った方がいい。『経験と勘』から『科学とテクノロジー』へ」。病理を知ることで得られるメリットとは。


■メカニズムを理解して早期発見・早期対処

――農業をしていくうえで皆さん悩まれるのが病害だと思うんですが、その病気のメカニズムというのはどういうことなんですか。

 例えば、私はワイン用のブドウとか、トマトとかいろんなものをつくってるんですけど、“べと病”という割と厄介な病気があるんです。最初のうちはもう農薬でしか防ぎようがないかなと思ってたんですけども、べと病のメカニズムってわかってるんですね。

 べと病の遊走子という胞子が風で飛散して葉っぱにつくんですけども、葉っぱの表についても発病しないんです。葉っぱの裏について、気温が30℃ぐらいから20℃ぐらいに一度下がると、胞子にハッチング(ふか)するスイッチが入るんです。

 そうすると、そこから遊走子が出てきて葉っぱの裏につく。でも、それだけでは発病しないんですね。これは水の中しか泳げないので、葉っぱの裏がぬれている状態で遊走子がつくと、泳いで気孔にたどり着いてその中に入り、だいたい40分から1時間で感染して葉っぱの表に病斑が出てくる。べと病の病斑が出たときにはもう手遅れで、次の胞子の二次感染がはじまってるわけですね。

 これは気象情報であるとか温度、湿度などいろんなものを計測していくと、「発病したはずだ」ということが予測できます。ですから、人間の病気と同じで早期発見・早期対処でいろんな手立てが打てる。そういうようなことも教わりまして、実践しています。


――その病気で今まで大きな被害に遭った地域ですとか野菜などはあったんですか。

 今年、相当大きな被害がありました。九州の佐賀県は玉ねぎの一大産地なんですけども、べと病で大きな被害がありました。収量が下がっちゃいましたし、もうそれで廃業するような農家さんも実際、出てきちゃったというふうに聞いてます。


■植物の病院…国家資格も

――そういったメカニズムが細かくわかっているのであれば、食いとめることもできたんじゃないですか。

 そうですね。私どもはいま、東京大学の植物病理学研究室と共同(協力)で“植物の病院”を作っています。これはあまりまだ取り上げられてないと思うんですけども、国家資格として“植物医師”という制度ができました。そういう専門の先生方が研究の世界ではなく、農業なり何なりの“実際の現場”で使える研究―その研究成果を社会実装しようということを今やっています。