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MS樋口氏“IT巨人”の危機感と未来図1

2016年9月22日 16:18
MS樋口氏“IT巨人”の危機感と未来図1

 キーワードを基にビジネスのヒントを聞く日テレNEWS24・デイリープラネット「飛躍のアルゴリズム」。今回は、日本マイクロソフト執行役員会長の樋口泰行氏。IT業界の巨人・マイクロソフトの“今”を聞いた。


■経歴

 樋口氏は、大阪大学工学部を卒業後、松下電器産業に入社し、ハーバード大学経営大学院でMBAを取得。ボストンコンサルティンググループ、アップルコンピュータを経て、2003年に日本ヒューレット・パッカード、2005年には、ダイエーの社長に就任。そして、2007年には、マイクロソフトにヘッドハントされ、社長、会長を歴任している。


■60以上の企業からマイクロソフトを選んだ理由

――ひとつ目のキーワードは「IT業界の巨人マイクロソフトだが、経営トップは“変化”に危機感を持っていた」。ダイエーをやめた後、樋口氏には60以上の会社からオファーがあり、その中で、マイクロソフトに決めた理由というのが“経営者が危機感を持っていたから”だとのこと。これは具体的にどういうことですか。

 会社を選ぶ前に、本社を訪問し、その時にCEOも会いましたが、とにかくこれだけ大きな成功を収めている会社にも関わらず、このままじゃダメだと。変化し続けないと会社っていうのはダメになるという危機感がすごく大きいんですね。

 「市場の変化」や「技術の変化」に対して素直に目を向けているので、この会社だったら大丈夫だなという感覚をすごく持ちました。

――マイクロソフトというのはご存知の通り、Windowsというパソコンになくてはならないともいえる基本ソフトを展開していて、やはりIT業界で“揺るぎない帝国”というのを築き上げたというイメージです。しかし、危機感を持っていたということが、かなり一般的な印象と違うなと感じるのですが。

 そうですね。本当に大きな成功を収めて、大きな利益を出していますので、かなりイメージが違ったのですが、その後、スマートフォンやタブレットが出てきて、必ずしもPCの成功が、そのままその変化についていけない局面もありましたので、やっぱりその危機感は、非常に正しかったのかなと思っています。


■マイクロソフトは日本企業より猛烈に働く

――そのほか、入社されてから驚いたことはありますか。

 とにかくよく働くといいますか、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉がアメリカの方からこうきたにも関わらず、本当に猛烈に働く、それから、1分1秒たりとも無駄にしない形で、ランチのときもずっと食べながらやる。イメージとまったく違いました。日本企業に比べたら、はるかに猛烈に働くという感じです。


■ビル・ゲイツは食事や観光に興味はない

――具体的に、ビル・ゲイツCEOやスティーブ・バルマーCEOとどんな会話をしたり、どんなところでスピード感を感じたりしましたか。

 そうですね、ビル・ゲイツCEOが日本に来たときは、普通であれば「おいしいものを食べに行こうか」「ちょっと観光しようか」とかあると思うんですが、全く興味がないですね。朝・昼・晩にハンバーガーを食べながらずっと仕事です。

――日本食などは?

 日本食を食べているのは見たことないですね。私は、ハンバーガー以外を食べているところを見たことがないですね。

――例えば日本らしい旅館に泊まりたいとかは?

 いやいや、もうとにかく「近いところ」ということで、起きてすぐ仕事ができる所に泊まるという感じですね。いったい、ビル・ゲイツの財産でハンバーガーをいくつ買えるのか知りませんけどね(笑)。まったく、そういうものには興味ないという感じです。

――成田からの移動の車の中で、同乗されたことがあるそうですが。

 そうですね。そもそも、成田からの移動も全部打ち合わせの時間に割かれています。

――休んだりとかはないのですね?

 そうですね。その時もずっと質問の嵐というか、質問を浴びせかけられる感じです。「日本の人口はいま何人か?」「小学生は何人いるか?」「中学生は何人いるか?」「そしたらこの製品は何台売れるんだ?」みたいな話です。


■全世界の社員が集まる「MGX」とは―

――マイクロソフトというとしっかりした“お堅い”会社で、グーグルやアップルは“遊び心”がある会社というイメージなんですが、実際はどうなんですか。今のお話を聞いていると、やっぱり堅苦しい会社なのかなと感じたのですが。

 堅苦しい会社というか、ビジネスに厳しい会社ですね。そういうことからすると、コンシューマー向けの柔らかいイメージを出すのは、少し不得意かもしれないんですが、逆にビジネス向けで、非常に信頼感や品質が必要な分野は、カッチリとやる会社ですね。

――全世界の社員が集まるイベント「MGX(Microsoft Global Exchange)」が年2回あるということなんですが。

 かなり前は、全社員が集まっていたんですが、それだと会社が動かなくなりますので、なるべくたくさん集まろうという風になった。それがMGX、いわゆる「全社員総会」ですね。

――そういうのがあるとやはり士気が上がったりとか?

 士気が上がりますね。情報技術に携わっている会社ですが、やはり“フェース トゥ フェース”が一番インパクトありますし、それからどんな会社でも哲学(Philosophy)が大事ですので、それをじかに伝える―そういう場というのは、どんな世の中になっても大事だという意味で、必ず1年1回全社員総会をやっています。


■“表彰”はモチベーションの源泉

――そのMGXの映像は非公開ということなんですが、唯一公開されている写真があります。樋口さんが大きなトロフィーを持っていますが、これは何ですか?(写真は2014年のもので、サティア・ナデラCEOとケビン・ターナーCOOにはさまれた樋口氏がトロフィーを持っている)

 ベストカントリーに選ばれると、このトロフィーがもらえます。まあ、うまいやり方かもしれませんね。各部に競争させて、より頑張らせるという仕組みがありまして、毎年、このように表彰されます。

 トロフィーは1回もらうと、1年間持って帰れるんですけど、1年たつとまた返さなければなりません。そういう仕組みなんですが、3回ベストカントリーになると、永久にもらえるんです。3回とりましたので、今は日本の支社に飾ってあります。

――こういった全員で集まって表彰するという方法は、どこか日本っぽいような気もしますが。

 そうですね。やっぱり表彰して喜びを分かちあう、頑張った社員を表彰するというのは、どんな国でも、どんな会社でも大事だと思います。給料のために働くとか、昇格したいとかいろいろあると思いますが、やはり会社がどれだけ社員のことを大切にしているか、どれだけ頑張った社員を表彰するかというのは、モチベーションの源泉になると思います。