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不当な契約トラブルには「さいふをまもる」

2016年9月9日 17:20
不当な契約トラブルには「さいふをまもる」

 注文していないはずのサプリメントが突然送られてきて、放っておいたところ、「1か月以内に返信はがきで断らない限り、購入したことになる」と契約書に書かれていたため、代金の請求書が届いた。

 代金を支払わないためには、この契約条項を無効とすることが必要となる。そんな時に頼りになる法律がある。中央大学法科大学院・野村修也教授が解説する「会議のミカタ」。9日のテーマは「不当な契約から消費者を守る」。

 今月7日に内閣府で行われた「消費者契約法専門調査会」。消費者が事業者から商品などを購入する際、不当な契約が結ばれないよう消費者を守るために制定された消費者契約法。今年の通常国会で改正が行われたが、それを踏まえてさらに改正すべき課題がないか意見交換が行われた。


――そもそも「消費者契約法」どんな内容のものなのか。

 契約一般についてのルールは民法に定められているが、契約のうち消費者が事業者と結ぶものについては、情報の格差や交渉力の違いなどから、消費者にとって不当な契約が締結される危険性がある。そこで、そうした不当な契約から消費者を守るために特別なルールを定めているのが消費者契約法だ。具体例を紹介する。

 1「不実告知」
 例:事故を起こした車を無事故の車として販売するなど業者がウソをついていた。

 2「断定的判断の提供」
 例:「この骨董(こっとう)品のつぼは絶対に値上がりする」など、不確実なことなのに断定的な説明を消費者にした。

 3「不利益事実の不告知」
 例:隣に大きなマンションが建つことを知っているのに「日当たり良好ですよ」など、不利益になることをあえて言わない。

 4「不退去」
 例:業者が自宅や職場に押しかけて買うというまで帰らない、いわゆる押し売り。

 5「退去妨害」
 例:セミナーなどに参加した時、「帰りたい」と言ったにもかかわらず、高額な教材を購入するまで帰してもらえない。


――消費者の味方になってくれる法律だということは分かったが、今回は、どこが改正されたのか。

 消費者が契約を取り消せる場合を増やした。具体的には、通常の分量を著しく超えた量の商品を売りつけた場合、危険を避けるためには商品の購入が必要だとする説明にウソがあった場合などにも契約を取り消せることにした。

 また、キャンセルを一切認めない条項や、返事をしないと購入したことになるといった条項は無効とされた。冒頭に紹介したサプリメントの問題はこれにあたるので、代金は払う必要はないというわけだ。


――消費者契約法については、まだまだ改正の議論があるようだが。

 ひっきりなしに電話がかかってきて、しょうがないので購入したり、断ったら急に大声で怒鳴りだし、収拾がつかなくなったので、帰りたい一心で契約をしたりするなど、いわゆる困惑による契約の場合も取り消しの対象にするかどうかなど様々な課題がある。


――そもそも、こうした不当な契約に巻き込まれないようにするためには、何が大事なのか。

 今回のポイントは「さいふをまもる」。これは国民生活センターが主に高齢者向けに作った消費者トラブルを事前に防ぐための標語だ。

 「さ」誘い文句にのらない
 「い」家の戸にしっかりとカギ
 「ふ」不審な人には注意
 「を」お断り上手に
 「ま」まずは家族などに相談
 「も」もしもに備えて、成年後見人
 「る」留守番 一人暮らしもこれで安心

 これらのことは高齢者ばかりではなく、全ての消費者の心構えとして大切なので心にとめておきたいものだ。