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玉塚氏、追撃のローソン“次の一手”2/4

2016年9月8日 15:34
玉塚氏、追撃のローソン“次の一手”2/4

 ローソン代表取締役会長CEOの玉塚元一氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。2つ目のキーワードは「文化、仕組み、仕事のやり方を変え、全員経営で戦い抜く」。

 競争が激化するコンビニ業界。玉塚氏はその状況が「イノベーションを生む」と語る。


■僕らの仕事は“ご近所のお店”

――今やコンビニ業界は飽和状態にあると言われておりますが、玉塚さんはどのように戦っていくつもりでいらっしゃいますか?

 まずひとつ、業界全体で言えることは、僕らがやっているお仕事って何かというと、“ご近所のお店”なんですね。比較的小型の。英語で言うと「ネイバーフッドストア」っていうんですけど。

 実は、この“ご近所のお店”っていうのは、今コンビニも5万5000店舗になり、10兆円を超える産業になりました。なぜ成長しているかというと、やっぱり街のニーズがあるんですよね。高齢化です。

 皆さんすごく忙しくなっている中で、遠くの大きなスーパーに今まで行っていたんだけど、どうしても行動半径が小さくなっていく。そういった時に、“ご近所のお店”でいろんなものが買えるようになって、いろんなサービスが提供できるようになれば便利だなと。そういう“ご近所のお店”に対するニーズが高まっているというのは、まずひとつだと思います。


■激化する競争に見いだす“イノベーション”

 我々の業界の特色としては、セブン‐イレブンさん、ローソン、ファミリーマートさんの上位3チェーンで大体の売り上げの9割ぐらいになっているんですね。そういう意味でいうと、どんどん寡占化が進んでいるわけです。競争もすごく激しい。

 ただ、健全な競争がイノベーションを生むんですね。セブン‐イレブンさんもファミリーマートさんもすごく強い商品を出してくるので、負けないように僕らもどんどん努力して強い商品を出していき、新しいサービスを提供する。常にそれを現場で戦っていますから。その高いレベルの競争が業界全体から新しいサービスを生み出していくわけですね。

 例えば、古くはATMから始まり、あるいはコーヒーやドーナツがあるとか、あるいは店頭、店内で簡単な揚げ物をしてお客さまに提供するとか…いろんなイノベーションの繰り返しなんですね。それがまた業界全体を進化させていくというような業界ですよね。


■お店を回るのが大好き

――コンビニは、ローソンとセブン‐イレブン、ファミリーマートの“3強の時代”と言えるかと思うんですけれども、その中でもやっぱりセブン‐イレブンというのはずっと首位を独走しているような状態だと思います。経営をする上でやっぱりセブン‐イレブンを意識することはありますか?

 当然、ちょっと都心なんかに行ったら、ここにもセブン‐イレブンがあって、ローソンがあって、ファミリーマートがあって…という状況で我々の加盟店さんは日々、戦っていますから、もちろん競合の方々も当然、意識しますけれど、もっと大事なのはやっぱりそれぞれの街、それぞれのお客さまをよく見て、そのお客さまが求められる商品やサービスをどれだけ継続的に提供できるか。その方がすごく大事だと思いますね。

 それぞれ皆さん高いレベルで頑張っておられるんで、そこには敬意を表しながら、「どんなことをやっているんだろうな」ってことは一応、情報として見ながらも、やっぱりお客さまを見る、街を見る。そして、我々ができてないことを正す。もっとスピードを早く改善できないかということをやりきる。そういうことがすごく大事かなと思います。


――直接セブン‐イレブンに行かれたりということはないですか?

 行きますよ。「店長さんこんにちは」って。(笑)


――どういうところに注目されますか?

 やっぱり「笑顔があるな」「お店がきれいかな」「品ぞろえが整っているかな」とかね。僕はお店を回るのが大好きなんですね。だからスーパーさんも行くし、百貨店さんも行くし、コンビニエンスストアも。当然ローソンはたくさん行きますけど、それ以外の店も見たりしています。


■盟友がライバルに

――コンビニ業界といえば、9月1日にファミリーマートとサークルKサンクスが経営統合したと思います。それで、今までファミリーマートは業界で3位と言われていたんですが2位に浮上しました。また、その新生ファミリーマートの社長に就任したのが、なんと、かつて企業再生を支援するリヴァンプを一緒に立ち上げた盟友・澤田貴司さんですが、ライバルになられたご心境はどういったものでしょうか?

 澤田さんとは、僕が旭硝子の工場から本社に帰ってきた時からですから、24とか25歳頃、もう30年以上の付き合いです。ファーストリテイリングでも共に働きましたし、リヴァンプって会社を一緒にやってきましたし、親友であり、盟友ですよね。

 ですから、澤田さんも本当にいろんな会社の経営に向き合ってこられて、そういう人がまたこの業界に入ってきて…先ほど申し上げた通り、健全な競争でイノベーションを生みますから、そういう意味でまた澤田さんの新しい知恵でコンビニ業界全体が盛り上がっていけばいいんじゃないかなと思います。


――やりにくいとかないですか?

 全くないです。望むところだ!(笑)

 一人の人を意識してもしょうがなくて、もっとそれよりも大きな流れとか、自分たちがまだまだできてないこととか、逆に、いま目の前にあるチャンスだとかそういったことを、先ほど申し上げた通りお客さまを見て、街を見て、従業員全員でそれをやっていくってことのほうが大事ですよね。