×

玉塚氏、追撃のローソン“次の一手”1/4

2016年9月8日 15:33
玉塚氏、追撃のローソン“次の一手”1/4

 キーワードを基にビジネスのヒントを聞く日テレNEWS24・デイリープラネット「飛躍のアルゴリズム」。今回はローソン代表取締役会長CEO・玉塚元一氏。その魅力的な人柄と、プロ経営者としての手腕と実績、そしてローソンでの“次の一手”に迫る。

■玉塚元一氏の経歴

 玉塚氏は、1985年に慶応大学を卒業後、旭硝子に入社。アメリカでMBAを取得し、日本IBMを経て、1998年、ユニクロを展開するファーストリテイリングに入社。フリースブームを仕掛け、2002年から3年間社長を務めた。

 2005年には、ファーストリテイリングの同僚とともに、企業の再生支援をするリヴァンプを設立。ロッテリアなどの再生を手がけ、2010年ローソンに入社、代表取締役社長を経て、今年6月代表取締役会長CEO就任した。


■「経営を成功させる本質」は不変

――ひとつ目のキーワードは「“カジュアルウエア→企業再生→コンビニ”経営の本質は不変!目の前の壁と向き合い打破して成長」。「目の前の壁」というのはどういうことなんでしょうか。

 私はいろんな縁があって、旭硝子の後に、ファーストリテイリングという会社に出会い、そこで7年ぐらい働きました。当時、ユニクロというのは、年商700億、300店舗ぐらいでした。今ではファーストリテイリングも2兆円弱ぐらいの売り上げになっていますが、そのような時に、柳井さんという創業者である現社長に会うことができて、ここで向き合ったことが、その後、いろんな意味での経営の本質だったりとか、商売の原理原則っていうのを体験できる時間でした。

 この後、特に企業再生の時には、外食関係の会社だったりとか、あるいはアパレルやシステムの会社だったりと、様々な会社に向き合うわけです。そして、今コンビニエンスストアですが、業態は違っても、強い会社を作る原理原則とか、どういう会社が成長していくのかという部分は、本質的にはとても共通項が多いと言う意味で、「経営や商売を成功させる本質」は不変であるという意味ですね。


■ステージが変わっても常に“向き合う”

 次の「目の前の壁と向き合い、打破して成長」というのは、なんか経営と言うよりもラグビーみたいな話ですけど(笑)、僕の場合、意識的に転職とか、どういうふうに自分が成長してるかということは、正直、あまり考えたことがありませんでした。

 柳井さんと出会って強烈な刺激を受けて、そこでそのファーストリテイリングを少しでも良い会社にしようっていうことを僕なりに頑張って、その後はチャンスがあり、企業再生の現場に行って、これも向き合って、また、縁があってローソンというところに向き合って―毎回その目の前のそびえ立つ壁に真摯(しんし)に向き合っていくと、また、それを破ったときに、新しい出会いが生まれて、そしてまた、次の壁に真摯に向き合うと。そういう中で少しずつ成長していって、今に至ると。全体的に言うと、そういうことですね。


■柳井さんがいなかったら今の自分はない

――柳井さんとの出会いがすごく刺激になったという話ですが、具体的に印象に残っている言葉などはありますか?

 言葉というかですね。やはり、例えば強い会社をつくっていく時の絶対外せないポイントっていうのが幾つかありまして、例えば高い目標(ビジョン)、これを明確に掲げるとか。やっぱり会社が成長していくためにはその会社が持つ文化っていうのがやっぱり健全じゃなきゃいけないんですね。

 いかにその健全な文化をつくっていくのか。「仮説-実行-検証」のサイクルを高速で回すことがいかに大事なのかとか、そういう経営・商売をやっていく上での原理原則的なことを常に本質的に語られていました。それに本当に薫陶を受けました。

――柳井さんがいなかったら今の玉塚さんはいないと言っても過言ではないですか。

 そう思います。やはり、7年間で本当にいい商売とか経営の原理原則ですね。僕なりに本当に近い距離で体感できましたし、後半は、柳井さんが会長で、僕が社長っていう近い距離で、いろんな判断・意思決定をしてきたことが、いろんな意味で、私の土台を作ってきたんじゃないかなと思います。


■ローソンには大きなポテンシャルがある

――その後、ローソンに入られましたが、その理由は?

 これはですね、僕の前任の新浪さん(サントリーホールディングスの社長)が当時のローソンの社長でした。いよいよこれからローソンの業容が広がっていく、海外にも出てくし、さまざまな事業体が広がっていく中で、なかなか自分だけでは難しいということで、「一緒にやりませんか」と。

 これは何度も何度もお誘いいただいて、ただ、私は自分の会社をやっていましたので、実際に移籍するまでに1年ぐらいの時間を要したわけです。その時に新浪さんという、また、柳井さんとは違った意味でのそれこそプロ経営者の代表的な方と一緒に仕事ができるということと同時に、いろんな方にヒアリングしていくと、ローソンってすごいポテンシャルがあるなと感じたんですね。

 全国に1万2000店舗あって、さまざまな物流拠点、弁当を作る工場が200拠点あって、そこで約20万人の方々が一生懸命働いてて―このローソンが持っている資産というのは、やり方によっては、磨き方によっては、もっともっと輝かせることができるというふうに感じました。いろいろ悩んだんですけども。ローソンに向き合うということで、移籍しました。


■「1ミリでもいい会社に」その気持ちが仲間を増やす

――経営者にも生え抜きのいわゆるずっとその会社にいて社長になられた方などいろいろあると思うんですが、外部から突然やってきて経営をするというのは、大変なことだと思うのですが。例えば突然やってきたことで、元からいた社員の反発や警戒感というのは感じたことはありませんでしたか。

 やはりそういうのはあると思うんですよね。ただ、外から来たゆえに、俯瞰(ふかん)して、客観的に事業そのものが見えたり、やはり、ずっとそこで働いていれば感じられなかったポテンシャルを感じたり、逆にピンチを感じたり、それが僕みたいな人間が外から来たときにはすごく大事で、その目と、今まで皆さんが一生懸命作り上げたものに対して、やっぱり敬意を表しながら、徹底的にコミュニケーションを図って、実際どういうことを今までしてきたんだろうと。

 その会社の強みは、何なのだろう、弱みは何なのだろうということを皆さんと話をして、僕は僕で感じたことを常にコミュニケーションを繰り返すということは、ローソンを1ミリでもいい会社にするってことですから。それはローソンで働いている従業員も僕も一緒ですよね。

 ローソンを1ミリでもいい会社にするために「今こういう問題がありますね」「こういうチャンスがありますね」「みんなで力を合わせてこういうことやっていきましょうね」っていうことを繰り返しコミュニケーションし、それを実行で示し、そうしているうちに段々「この人、本気でローソンをいい会社にしようとしているんだな」「この人の考え方というのは、ここの部分については賛同できるな」…そして仲間がどんどん増えてくる。そういうことだと思います。