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プールで「日焼け止め」が禁止のワケ

2016年7月29日 18:44
プールで「日焼け止め」が禁止のワケ

 インターネットを中心に話題となった出来事の中から「もっと」知りたいニュースを取り上げる「news every.」鈴江奈々キャスターの「MOTTO」。

 紫外線から肌を守るために塗る日焼け止めクリーム。しかし、学校や公営のプールで日焼け止め禁止のところがあり、戸惑いの声が上がっている。いったいなぜ、日焼け止めクリームを禁止しているのか?取材した。


■日焼け止めで水質汚染?

 28日、東京では梅雨明けが発表された。東京・練馬区のレジャー施設“としまえん”では多くの子どもたちが水遊びを楽しんでいた。紫外線から肌を守るため子どもに日焼け止めクリームを塗る母親の姿もあった。

 一方、荒川区立のプールでは、日焼け止めを塗っている人の姿は見られない。看板には“日焼け止めクリームを使用している方はご利用できません”と書かれていた。その理由を、荒川区道路公園課・大木浩課長はこう話す。

 「日焼け止めなどを塗って来られますと、“水が汚れる”などの衛生上の理由からご遠慮いただいている」

 このプールでは長袖の水着“ラッシュガード”の着用を認めているそうだ。実は、公営や学校のプールでは、日焼け止めの使用を禁止しているところがある。日焼け止めでプールの水は汚染されてしまうのだろうか。


■使用OK!でも…

 としまえんでは、日焼け止めの使用を認めている。ただ、プールの入り口には“日焼け止めクリーム等を利用の方は、プールに入る前にシャワーで洗い流して下さい”という注意書きがあった。としまえん事業企画課・宮内靖代さんによると――

 「多くのお客様が利用するので、水質の管理の上でシャワーを浴びていただいてから(プールに)入っていただくようにお願いしております」

 公立学校でのプールの授業で、日焼け止めを認めているか都内23区に調査したところ、原則禁止は6区、学校などの判断という区が16だった。原則禁止の理由は「水質が悪化するため」ということだ。

 日本学校保健会が発行するマニュアルには、『無条件に全員が使用することを容認すると、プール水の汚れの要因になります』と書かれていて、それを理由にしているところもあった。しかし、保護者や子どもからは「塗りたい」という声も上がっていた。


■実際に汚染はされるのか?

 皮膚へのダメージを防ぐ日焼け止めで水質が汚染されるのか、関東中央病院・皮膚科特別顧問の日野治子医師に話を聞いた。

 「サンスクリーン剤(日焼け止め)を使う前と使った後と、どのくらい汚れているか実験データがありまして、それでは汚染されていないと証明されています」

 児童60人中、半数の30人が日焼け止めを塗り、約2か月間プール授業をして水質に変化があるのか皮膚科医らが調査した結果、殺菌力に影響を及ぼすペーハー(pH)は基準値内でほぼ変わらず、水の濁りの度合いも基準値を下回っていた。規模や頻度によって異なるとしながらも、問題になるほどの汚染はないという。


■フィルターの劣化を引き起こす可能性も

 一方、プールのろ過装置メーカーであるミウラ化学装置プール事業部の東貴憲さんによると、細かい粒子が残り、フィルターの劣化につながる可能性があるという。

 これから夏本番。それぞれのルールに従って楽しみたいものだ。


■どうする?紫外線対策

 屋外プールでは、子どもたちが日焼けをすることに不安を感じる母親の声が多く聞かれた。取材した皮膚科医によると、日焼け止めクリームの効果を持続的なものにするには、2~3時間おきに塗り直した方がいいそうだ。

 また、日本小児皮膚科学会によると、紫外線に短時間あたっただけで真っ赤になっても色黒にならない皮膚のタイプの人は、紫外線対策は特に大切だということだ。ただ、過剰な紫外線防御は逆に子どもの成長の妨げになることがあるので、上手に紫外線対策を行ってほしいということだ。

 中央大学法科大学院・野村修也教授はこう見る。

 「授業で強制的にプールに入らせる以上、生徒の健康を最優先にすべきだと思うんです。日焼け止めを禁止している自治体では、サーファーなどが身に着けるラッシュガードの着用を認めているところもあるので、文科省は機能的で値段の安いものを全国に配布できないか、検討をすべきだと思います」