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佐山展生氏語る“企業再生の本質” 2/4

2016年7月21日 20:20
佐山展生氏語る“企業再生の本質” 2/4

 インテグラル代表取締役パートナー・佐山展生氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。2つ目のキーワードは「投資ファンドはハゲタカじゃない。再生の出発点は2000人の従業員と家族の不安払拭だった」。


■再生させる上で第一歩となる仕事とは

――先ほど少し従業員などの話も出ましたけれども、投資ファンドが来たと聞くと、ハゲタカだと思ってしまう方も多いと思うんですけれども…

 確かに、お金もうけだけを考えている投資ファンドもあると思います。また身近に感じませんし、そういったことを言われる方も多いですから、民事再生というだけでも不安になるんですね。

 その次の投資家が投資ファンドだというと、恐らくご家族の皆さんが不安だろうと思ったので、1月28日に民事再生の申し立てをした後、再生決定が決まった後に全支店を回りました。

 そこで従業員の皆さんに民事再生とは何か。それから、我々の考え方、すなわち、本件は大型機の契約を打ち切って「ボーイング737」だけの一本化にすれば、人員削減も一切しませんし、給与カットもしませんということをきっちりと話をしました。ただしそれは、ご家族の方にきっちりと従業員の皆さんが伝えられるかというと、これはなかなか難しいと思うんです。そのため羽田に、ご家族の方も集まっていただいて、400人かける2回、2月と3月に説明会をしました。

 そこで大感激したのは大黒摩季さんがビデオメッセージを送ってくださったんですよ。病気療養中の大黒摩季さんがバーンとビデオに映って「皆さん頑張ってください」というメッセージの後に、ガーンと流れてくるんですね。今、聴いても涙が出てきますけど、それに励まされて、それからご家族の皆さんは、格納庫の飛行機に乗っていただいて、そこでもまたご説明をして、皆さん安心されて帰られたと思います。そういったことが第一歩の仕事だと思うんですね。

――会社としてご家族を呼んで説明会というのは、あまり聞いたことがないと思うのですが…

 以前の経営者の井手さん有森さん、それから幹部の人たちがやはり家族の方々は不安だろうということでセットしていただきました。2回やりまして、その2回目、とにかく昼過ぎまでずっとやってるんですね。その日、実は私、横浜マラソンだったんですよ。「さぁ、行こうか」と思って横浜に行ったら締め切りで終わっていました。走れなかったというオチつきなんですが、とにかく、ご家族の皆さんの不安を払拭するのが、そのときの私たちの仕事だと思っていました。


■人員削減をしないで再生できたワケ

――人員削減なくして再生できた理由、そして、中型機にした理由というのもおうかがいしましたけれども、改めて教えていただけますか。

 とにかく、民事再生とか会社更生になる会社っていうのは、その原因がいくつかあるわけです。ところがスカイマークの場合は、非常にシンプルに「エアバスA330」とそれから「エアバスA380」の契約、この2つが大きな足かせになっていたんですね。

 ですから、それを払拭することが、民事再生であればできますので、「ボーイング737」の一本にすれば、まず乗員の方、それから整備の関係、全て同じ機種になって効率よく回せるというような自信がありました。それから、ドル箱である羽田枠がきっちりかせげるというのはわかっていました。そのため不安はほとんどなかったです。

 最も大きな不安は、従業員の皆さんが本当に信頼して残ってくださるかということですよね。それがもう心配だったのですが、それをまず払拭したということでしょうかね。

――私も取材をさせていただいて、こんな短期間で黒字化するっていうのは、正直想像がつきませんでした。

 今年の3月期というのは当たり前ですが、去年の4月から始まっているわけです。去年の4月から新体制に移ったのが去年の9月29日ですね。その間、半年間というのは民事再生手続がどうなるかわからないという状態での経営なわけです。その後、やっと新体制でスタートしましたので、当初は今年の3月期は収支トントン営業利益はトントンだろうと読んでいました。

 ところが、従業員の皆さんがかなり頑張っていただいて、それから、たくさん乗っていただけているということは、1回乗ったけれど、もう1回乗ろうと思っていただいた証拠なんです。ですから従業員の皆さんと、それからお客様に支えられてですね。営業利益がプラス15億まできたということです。

 さらに、今年も2月以降、搭乗率が80%を超えていて、これはもう去年よりも15%以上高い。皆さんの頑張りで順調に今まできています。それと忘れてならないのは、ANAさんにサポートしていただきましたことです。


■航空会社が優先すべきこと

――佐山さんは以前から“社員の意識”ということをおっしゃっていますけれども、私が最初に取材させていただいたときは、当時、まだ定時運行率もそんなに高くなかったというふうにうかがっていましたが。

 やはりですね、私も利用客として考えてみるとそうなんですが、航空会社というのは当たり前ですが、まずは安全、これはすべてに優先します。それができたうえで、次はやっぱり定時制なんです。きっちりと飛んで、きっちりと着いてくれないと移動手段として使えないわけです。

 ところが、以前のスカイマークはあまり高くなかったようです。しかし、それにとにかく搭乗率、定時出発率を上げようということで、全社一丸となってトップクラスまできています。しかしトップクラスじゃダメなんですね。いったん、あそこは遅れるんだと思った人に戻ってきてもらうには、一番でないと。ですから我々は定時出発率で日本一を目指し頑張っています。ですから、安全、かつきっちりと着く、かつ安い、かつ気持ちいい。ホワイノット(Why not)ですよ。

――そういうことが黒字化につながっている?

 もう毎日の積み重ねです。新しい制服も14日に発表させていただきましたが、全く違うカタチで10月からは装いも新たにというふうに頑張っています。

――制服の話もちょっと出ましたが、何か次に考えていることというのはありますか。

 次というか、どんどん色々なことを考えていますが「また乗りたいね!」推進室というのをつくりまして、そこはそういうことばかり考えている部なんです。ですから次また発表します。