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香港で脅かされる“言論・出版の自由”

2016年7月15日 13:46
香港で脅かされる“言論・出版の自由”

 今月、19回目の返還記念日を迎えた香港。中国本土に比べて言論・出版の自由が認められているが、その雲行きが怪しくなっている。


■香港で堂々と販売されている「スキャンダル本」
 香港の繁華街。売店には中国共産党のスキャンダルを扱う本が堂々と販売されている。中国の習近平国家主席の資金源に関するものや李克強首相との権力闘争に関するものなど、これらは中国本土では発行が禁止されている。

 1997年にイギリスから中国に返還された香港。香港の資本主義の経済体制などを維持するため、中国の特別行政区として高度な自治が認められた「一国二制度」が採用された。

 これにより、中国本土とは違う法律が適用され、警察組織は中国本土から独立したものとなり、議会にあたる立法会の一部の議員も直接選挙で選ばれるなど、生活環境が全く違うものとなっている。

■「言論・出版の自由」を揺るがした事件
 こうした中、中国本土との違いのひとつである「言論と出版の自由」について、大きく揺るがす事件が起きている。

 今月1日の返還記念日に、あるデモ行進が行われた。

 「中国での発禁本を守ろう!香港人が言論・出版の自由を支える!」

 中国当局から不当に拘束されたと訴える書店の店長・林栄基さんの写真を持ち、出版の自由を訴えた。

 林さんは、中国共産党に批判的な本を扱う書店の店長をしていたが、去年10月、広東省で突然、中国当局に身柄を拘束された。容疑は「中国本土で発行禁止の書籍をインターネットを通じて販売した」というものだった。

 林さん「私は香港で本を作り、郵便で送っただけ。何も違法行為はしていない」

 実は林さんの書店からは、株主の男性など合わせて5人が去年から行方不明になっていた。そのうち林さんを含む4人が中国当局から拘束されていたという。

 林さん「(自白は)自分の意思ではない。撮影時にはディレクターがいて、台本があった」

 「不当な捜査の末、自白を強要させられた」と主張する林さん。中国当局は容疑以外に、習主席に関する書籍の作家や情報源についてしつこく聞いてきたという。

 さらに林さんは、中国当局が「一国二制度」に反し、本来、捜査権のない香港内でも捜査をしていたと主張。香港警察もこの主張を重くみて林さん自身から聞き取りを行っている。


■ほかの書店に心理的な影響も
 今回の中国当局の捜査は、香港で共産党に批判的な本を扱うほかの書店にも心理的な影響をもたらしている。

 共産党に批判的な本を扱う書店の店長「現在は圧力を受けていないが、家族は心配している。(家族は)『敏感な本を売らないでほしい』と言っています」

 また、客の多くを占める中国本土からの旅行客も「こういう本を買えなくなったら残念です。香港の言論の自由を残してほしい」と今回の事件に反発していた。

 テレビ局や新聞社といった香港の地元メディアにも中国資本が入るなど、報道も中国当局の意向をくむ体制になりつつある香港。「言論と出版の自由」を不安視する見方が広がっている。