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在宅医療推進のカギは?その現状と課題

2016年7月15日 18:42
在宅医療推進のカギは?その現状と課題

 中央大学法科大学院・野村修也教授が解説する「会議のミカタ」。15日のテーマは「在宅医療の環境整備」。

 今月6日、第1回全国在宅医療会議が開かれた。行政や医療、介護などの関係者が集まり、在宅医療をどのように普及、啓発していくのかについて議論が始まった。

 在宅での医療は実際、どのように行われているのか。神奈川県横浜市の日吉慶友クリニックでは、通常の外来診療とは別に「在宅医療」を専門に行っている部門がある。

 一人暮らしをする60代の女性は2年前に脳出血を患い、車いす生活で通院が難しくなったため、自宅で月に2回、定期的に診察を受けている。診察は温かい雰囲気で、スタッフが、在宅医療ならではの自宅での生活に関するアドバイスなどをしている様子が、とても印象的だった。


――今後、在宅医療の必要性は高まるのか?

 病状の重さや家庭の事情は様々なので、入院治療と在宅医療のどちらが望ましいかは一概には言えない。ただ、中には病状も軽く、本人も家族も在宅医療を望んでいるにもかかわらず、一人暮らしであるなど治療環境が整わないため、入院を選んでいるケースが見られる。

 この状況を放置してしまうと、2025年の病床数=病院などのベッドの数が150万床以上必要になると見込まれている。しかし、必ずしも入院を必要としない方々が在宅医療を選ぶことが増えれば、120万床以下になるとみられている。結果的に医療費の抑制にもつながる。

 そこで、政府は在宅医療の充実を図ることで在宅医療を選びやすい環境作りを検討している。


――具体的には、どのような取り組みが検討されているのか?

 例えば「ITを駆使した見守りサービス」。主に一人暮らしの高齢者向けのサービスで、対象者にペンダント型端末を身につけてもらって対象者の活動量、部屋の温度・湿度をセンサーで感知し、データをインターネット上に保存、外部からパソコンやスマホで確認できるというシステムだ。

 一部地域で試験運用が行われているもので、現在は民生委員が確認できるものだが、今後ルール作りが進めば、病院、消防などが見られるようになり、連携しながら高齢者を見守ることも可能になる。

 また、在宅医療の費用を軽減するために保険の活用も行われている。民間の医療保険はこれまで入院1日につき1万円など、入院や通院を保障するものは多くあったが、在宅医療は保障外のものがほとんどだった。しかし、最近になって在宅医療も全般的に保障する商品が出てきている。

 ――在宅医療の推進のカギはどこにあるのか?

 今回の会議のミカタのポイントは「ネットワークを作る」。在宅医療には、家族はもちろん直接治療に携わる医師や看護師だけではなく、介護サービスの提供者などたくさんの人の力が必要だ。そうした人たちが「みんなで連携」することが大事になる。

 今回取材した日吉慶友クリニックでは、医師や看護師とは別にアシスタントがいて、患者さんのデータをパソコンに入力し、この情報を介護士などと共有しているという。

 今後は情報をデータベース化し、ITの技術を使っていくことによってネットワークを作ることできれば、まさに「みんなで見守りながら」在宅医療を進めていくことが出来るのではないか。