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「ロボホン」を生んだ高橋氏の独創力3/4

2016年6月23日 15:54
「ロボホン」を生んだ高橋氏の独創力3/4

 ロボ・ガレージ代表取締役社長・ロボットクリエイターの高橋智隆氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。3つ目のキーワードは「自分が欲しい物を自分で作る。売り込みはしない」。ロボット開発には、大企業とのコラボが不可欠だという。高橋氏の考え方を聞いた。


■自分が欲しい物をつくる

――どうして売り込みをしないのでしょう。

 自分が好きな物を作ると、少なくとも自分が欲しい物が完成するんです。そうすると同じ感性を持っている人から支持してもらえて、例えばそれを「商品化したい」とか「プロモーションに使いたい」などの話が舞い込んできます。

 例えば、私がおじいちゃんのためのロボットを作ろうとか、女子高校生にバカ売れするロボットを作ろうと思っても、たぶん失敗してしまうんですね。それは私が、“当事者”でないからです。自分が欲しい物を作れば、そこはズレません。結果的に、ある層の人たちには支持されると。だから売り込みは必要ないと思っています。


■大企業では「斬新なアイデア」はつぶされる

――高橋さんと言えば、過去にパナソニックの「エボルタ」、トヨタの「キロボ」、そして今回のシャープの「ロボホン」ということで、大企業とコラボされています。その経緯を教えてください。

 ひとつは、ロボットは非常に手がかかりまして、ベンチャーのクラウドファンディングのようなもので少し資金を集めて作るということでは、手に負えないんですね。どうしてもそこで、開発の規模が大きくなる。そこで大企業と組む必要が出てきます。

 一方で、大企業にも致命的な欠点があります。組織の中でさまざまなヒエラルキーがあって、斬新なアイデアというのはつぶされてしまうんですね。それは現場の中で、民主的に会議などで多数決をとっていくと、当然、平均的なものになっていきます。また、上司が口をはさむことによって、当初はとがっていたコンセプトもずれていって、普通のものになってしまいます。

 そこへ私のような外部のベンチャーの人間がいると、そこをとがったままアウトプットまでもっていける。そういうメリットがあると思っています。


■シャープ経営難の時期

――シャープが経営的に苦しいときがありました。そんなときにもロボホンを世に出すまでに不安はなかったですか。

 なかったといえばうそになります。最悪の事態も当然考えました。ただ、ともすると暗い雰囲気が漂う社内の中でも、ロボホンのプロジェクトに携わっている人たちだけは、忙しいながらも全く新しいチャレンジをしていて、これが今の閉塞感を打破してくれるんじゃないかと期待を持って取り組んでいました。そういう意味では雰囲気は良かったですね。


――シャープはどのような特徴がある企業ですか。

 実は、このプロジェクトをいっしょにやろうと誘ってくれた方は、昔、携帯電話にカメラをつけた方なんですね。シャープさんを振り返ってみると、斬新なものをたくさんつくっていて、中には、うまくいかなかったものもあるとは思いますが、非常にチャレンジングな会社なんですね。そういう精神が感じられました。


■シャープと組んだ理由

――ほかにも自動車メーカーや、通信会社ともロボットで組もうというお話があったそうですが。

 その中でも、どこかで聞いたことあるコンセプトだったり、他社がやっているようなものだったり、あるいは、今売れている商品のおまけ的な位置づけでロボットをつくってみたいとか、ちょっと脇役的なそういうプロジェクトの提案が多かったです。

 私はやはり、スマホに代わる将来の“1人1台の通信端末”を目指したいと。それでそこに全面的に賛同していただけたのがシャープさんだったわけです。