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被爆者と抱擁も…明かされた大統領との会話

2016年5月28日 0:37
被爆者と抱擁も…明かされた大統領との会話

 アメリカのオバマ大統領が27日夕方、被爆地・広島を訪れた。平和公園にある原爆慰霊碑に花をささげた後、慰霊碑の前でスピーチを行い、その後、オバマ大統領は、被爆者のもとに歩み寄った。

■被爆者の森さんを抱きしめたオバマ大統領

 坪井直さん(91)と握手を交わす。すると坪井さんは、オバマ大統領の手を握ったまま、通訳を介して語りかけた。坪井さんの言葉に耳を傾けるオバマ大統領。坪井さんが“核なき世界”の実現に向け、一緒に取り組みましょうと話すと“ありがとう”と応じ、握手する手に力がこもったという。

 その後、もう1人、被爆者の森重昭さん(79)とも握手を交わした。森さんは長年、原爆で亡くなったアメリカ人捕虜を調査し、遺族に伝えている。その活動は、アメリカでも知られているという。森さんが大統領に会えてうれしいと伝えると、オバマ大統領は森さんを抱きしめた。

■シンゾウと一緒に…日米首脳が交わした言葉

 被爆者と言葉を交わした後、オバマ大統領は安倍首相と並んで原爆ドームに向かった。2人きりでおよそ2分間、歩きながら会話をした日米の首脳。オバマ大統領から次のような言葉があったという。

 オバマ大統領『今回、広島に来ることができて本当によかった』

 安倍首相が「今回の訪問は核なき世界に向けた大きな一歩になることは間違いない」と応じると、オバマ大統領は、「これからシンゾウ(安倍首相)と一緒にやるべきことがたくさんある。今日はあくまでスタートだ」と話したという。

 その後、オバマ大統領は、岸田外相から原爆ドームの説明を受け、熱心に耳を傾けていたという。

 そして午後6時10分すぎ。オバマ大統領は専用車に乗り込み、歴史的な訪問を終えた。平和記念公園に滞在した時間はおよそ48分間だった。

■坪井さんが明かす大統領との会話

 オバマ大統領と対面した直後の坪井直さん(91)。

 Q:通じ合えましたか?

 被爆者・坪井直さん「それはね、まだ一皮二皮くらい。もうちょっと時間が…」

 Q:オバマ大統領と会って良かった?

 被爆者・坪井直さん「良すぎたかな」

 楽しみ続けた大統領の訪問に、興奮を隠せない。

 あの時、どんな言葉を交わしたのか-。

 被爆者・坪井直さん「人類が幸せになるためには、いろいろ戦争とかあるでしょ。それを説いてくれたけど、『そういうことを丁寧にお話しされて、私の胸の内は燃えに燃えました』と言った。そしたら『ハァー』と笑ってた」「オバマさんにね『きょう、オバマさん、資料館ちょろっと見て15分で見て、それで私の話は3分か4分くらい』そういうのをちょっと皮肉って」「『一生懸命ともに歩いていきたいから、もう(任期が)終わったと言って遊んだらいけません』と言ったんです」「あっちが笑うから、こっちも笑って」

 真面目な印象だったというオバマ大統領。ずっと続いていた握手。実は、オバマ大統領が手を離さなかったのだという。

 Q:ずっと握手していた?

 被爆者・坪井直さん「そう、ずーっと長かった」「こっちが外そうと思ったら、あっちが物言わずこればっか」

 そして、坪井さんが話をするたびに、手を握る力が強くなったという。

■「最高のもてなしを米側がしてくれた」

 大統領と抱き合い、涙を見せた森重昭さん(79)は-。

 Q:大統領の手はどうだった?

 被爆者・森重昭さん「温かかった」

 Q:ぎゅっと握ってましたか?

 被爆者・森重昭さん「うん、かなり」「夢のようでした。本当のことを言うけど、今まで苦労に苦労重ねた。大変な思いをしたけど、最高のおもてなしを今日はアメリカ側がしてくれた」

■被爆者・寺前妙子さん「やっとある程度、報われた」

 一方、原爆で左目を失った寺前妙子さん(85)。17分間の大統領のスピーチに、じっと耳を傾けていた。

 Q:話を聞かれてどう感じました?

 被爆者・寺前妙子さん「やはり70年前の壁を乗り越えて、これから共に平和に尽くしていくことを言われたことが頭に浮かんで、大変うれしく思いました」「やっとある程度、報われたということが大変うれしく思いました」

 大統領が去った平和公園。たむけられた花を一目見ようと、慰霊碑の前には多くの人が押し寄せた。

 27日午後7時すぎ、日本を発ったオバマ大統領。アメリカメディアも、森さんと抱き合う大統領の写真を使って、今回の訪問を大きく伝えた。

 歴史的な1日。慰霊碑の前の列は、夜遅くなっても続いた。