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36年ぶり党大会開催、北朝鮮の狙いは?

2016年5月27日 15:17
36年ぶり党大会開催、北朝鮮の狙いは?

 世界が注目する中、北朝鮮で36年ぶりに朝鮮労働党の党大会が開かれた。重要な行事を開催し、国際社会に訴えたかったことは一体、何だったのだろうか。


■新ポスト「党委員長」に就任
 今月10日、北朝鮮の首都・平壌。中心部の金日成広場は、集まった多くの市民で埋め尽くされていた。朝鮮労働党の党大会開催を祝う大規模な祝賀行事を行うためだ。

 市民らが見上げる演壇に金正恩委員長が姿を見せた。党大会では、新たに設けられた「党委員長」のポストに就任した。軍を優先した父親の金正日総書記と異なり、党を重視する姿勢を鮮明にする狙いがあるものとみられる。

 そして、金委員長の体制の幕開けをアピールする集大成とも言える、市民によるパレードが始まった。色とりどりの花飾りを持って一糸乱れぬ姿で行進する市民ら。「万歳!」と叫びながら、目線を向けるのは、やはり演壇の中心にいる金委員長だ。


■北朝鮮が訴えたかった「並進路線」
 実はこのパレードに、今回の党大会で北朝鮮が訴えたかったことが見え隠れしていた。

 パレードに登場したミサイルの模型のような山車に書かれた「並進路線」という文字。「並進路線」とは、金委員長が掲げた核開発と経済発展を同時に進める考え方で、この考え方こそ幕開けした金委員長の時代を象徴する言葉だ。

 NNNも党大会を取材中、度々、核と経済をめぐる発言に触れた。

 党大会の初日、まず金委員長は4年あまりにわたる自らの業績を強調。ここで出てきたのも核開発だった。

 金委員長「(今年は)初の水爆実験と人工衛星打ち上げの大成功を成し遂げ、前例のない成果を成し遂げた」

 その後も党大会を通じ、核開発の強化を繰り返した金委員長。さらに、「責任ある核保有国として、敵対勢力が核で自主権を侵害しない限り、先に核兵器を使わず、核拡散防止の義務を履行し、世界の非核化実現に努力する」と、非核化に取り組む姿勢にも言及した。

 しかし、これには北朝鮮が「核保有国」であることを既成事実にしたいとの思惑があるとみられる。


■経済は…
 一方の経済だが、北朝鮮は相次ぐ核開発やミサイル発射をめぐり、国際社会から厳しい経済制裁を受けている。しかし、今回NNNが案内されたのは平壌市内にあるデパート。撮影は許可されなかったが、店内には海外の製品を含め、商品が豊富に並んでいた。

 日本円の約1000円で、どれほどのものが買えるか。市民生活になるべく関係する日用品を購入してみると、しょうゆや酢、ノリや缶詰にラーメンなど多くの商品が買えた。

 普段、デパートで買い物をするという市民は「(Qどんなものを買う?)パンやお菓子など子供の好きな物よ」と話した。海外メディアに制裁の影響が出ていないことを強調し、経済が安定していると印象づけたいとの狙いがあるとみられる。


■並進路線を“憲法よりも上位に”
 北朝鮮は党大会で、最終的に核開発と経済強化を同時に進める「並進路線」を、憲法よりも上位にある労働党の規約に盛り込んだ。党大会を機に、韓国に軍事会談を呼びかけるなど今は対話を求める姿勢を見せている。ただ、関係国が求める非核化には応じるとは考えにくく、対話で国際社会に揺さぶりをかける狙いがあるとみられる。

 党大会で核開発を進める姿勢を強調した北朝鮮が今後、国際社会とどのように向き合うのか。金委員長の次の一手が注目される。