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太っているほうが長生き?意外なデータも…

2016年5月26日 19:44
太っているほうが長生き?意外なデータも…

 今月10日、厚生労働省の検討会は、メタボ健診について見直す方向で検討していることを明らかにした。また、「やせているより、太っているほうが長生きする」という意外な調査結果もある。健康を維持するために、何に気をつければいいのだろうか。

 キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。26日のテーマは「“やせ”でも注意」。諏訪中央病院・鎌田實名誉院長が解説する。

■“メタボ健診”が変わる

 現在のメタボリックシンドロームを予防するための特定健診(=メタボ健診)の制度では、(A)おなか周りが男性で85センチ以上、女性で90センチ以上など肥満であるかどうかを第一条件として、(B)血圧、血糖、脂質などの数値に異常がある人を対象に特定保健指導が実施されている。

 一方、検討されている案では、おなか周りや肥満であるかどうかに限らず、まず、血圧、血糖、脂質などの数値に異常があれば、保健指導の対象としようとするもの。その上で、おなか周りが基準以上であれば減量に向けて指導の対象になり、基準以下であっても、食生活の改善などの指導の対象となる。

 つまり、この意味するところは「やせていても注意が必要」だということだ。

■太っているほうが長生き?

 現在は、おなか周りなど肥満かどうかを第一の条件としているので、生活習慣病などのリスクがある“やせている人”が対象から漏れていた。重要なのは、「太っている方が病気になりがちで、やせてさえいれば健康」という思い込みを忘れた方がいいということだ。また、高齢者にとっては、やせているより、太っている方が長生きする、というデータもある。

 東京都健康長寿医療センターが体格と生存率との関係を調べたグラフによると、65歳以上の高齢者1048人を8年間追跡調査し、調査を始めてからの生存率を体格別に分類すると、「太い人」「少し太い人」「少し細い人」にくらべて、「細い人」は生存率が低くなっていることがわかる。

 このグラフで「細い」と定義しているのは、肥満度を表す体格指数、BMIの値で20以下、つまり、身長155センチの人で体重およそ48キロ以下、160センチで約51キロ以下の人だ。これは、決してガリガリというワケではない。スラっとしている程度だ。でも、その位の“やせ”の人でも長期的にみると、他のグループに比べて、明らかに生存率が低くなっていて、普通か太っている人の方が長生きしていることがわかる。

■コレステロール値が低いと…

 さらに、高齢者の総コレステロール値と生存率との関係を表したグラフによると、コレステロール値の「高い人」「やや高い人」「やや低い人」に比べて、「低い人」の生存率が低くなっていることがわかる。一般的には、コレステロール値の高い人ほど、生存率が低くなるように思われがちだが、長期的に見てみると、むしろ高めか普通の人の方が長生きしている。

 もちろん、コレステロール値が高ければ高いほど良いというわけではない。ただ、コレステロール値が低いのも問題だ。がんや慢性肝炎のような病気によってコレステロール値が低くなることがあるので、一概には言えないが、普段の栄養のとり方に問題があると考えれば、食生活を見直すことが大切だ。

■高齢者も肉を積極的に

 東京都健康長寿医療センター・新開副所長は「高齢者の栄養不足の主な原因は食生活にある」「長生きする人ほどもりもり食べてたっぷり栄養をとっている」と、話す。特に、高齢者はコレステロールを気にして、肉を敬遠しがちで魚ばかりを選んでしまう人が多いが、新開副所長によると、肉には魚からはとりにくい栄養素も含まれているので、肉と魚は1対1のイメージで食べるようにして欲しいという。

■高齢者もしっかりと栄養を

 今回のポイントは「栄養をしっかり取る」。糖尿病などの持病のある人は、医師の指導にしたがって食事制限をする必要がある。ただ一般的に日本の高齢者には、食生活からくる栄養不足によって寿命を短くしてしまっている可能性がある。野菜をたっぷりとった上で、肉や魚、乳製品などバランスの良い食事で、太ることを意識しすぎず、栄養をしっかりとることが長生きの秘けつだ。