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36年ぶり党大会、現地で見た北朝鮮のいま

2016年5月20日 16:15
36年ぶり党大会、現地で見た北朝鮮のいま

 北朝鮮では今月、36年ぶりに国家運営の方針を示す朝鮮労働党大会が開かれ、世界各国のメディアが首都・平壌に入った。厳しい情報規制が敷かれる中で、NNNのカメラが見たものとは。


■世界各国のメディア約130人が取材
 党大会の開催を3日後に控えた今月3日、平壌空港には日本や欧米から多くのメディアが到着、持ち込んだ機材やパソコンのデータに至るまで厳重な荷物検査を受けた。

 平壌市内では、党大会のスローガンを掲げた看板や、大雨の中、祝賀行事の練習に向かう市民の姿があり、国を挙げて大会を盛り上げようというムードが高まっていた。今回、党大会の取材のために集まったメディアは世界各国から約130人に上る。


■一斉に案内“ミステリーツアー”のよう
 取材は北朝鮮側が決めた場所に一斉に案内されるツアー形式で、直前まで行き先が「秘密」という徹底した情報規制が敷かれ、まるで“ミステリーツアー”のようだった。

 取材の始まりは、北朝鮮で初めて国産の機関銃が作られたという兵器工場の跡地だった。ここは去年、金正恩委員長が視察した際に「北朝鮮が水素爆弾を保有している」と初めて言及したという場所だ。核兵器の開発推進という業績を強調するために公開されたとみられる。

 その後も連日、メディアは金委員長の業績を誇示するような場所に案内された。科学技術の学習施設では、2012年に発射された事実上の長距離弾道ミサイルの模型が展示されていた。さらに、子どもたちが集う広場にもミサイルをモチーフとした遊具が設置されていた。

 北朝鮮は核実験やミサイル発射で国威発揚を図っていて、生活の場でも象徴的にミサイルを用いることで、市民の気持ちも高ぶらせているように見えた。


■工場の従業員「経済制裁の影響ない」
 核実験や相次ぐミサイル発射を受けて国際社会から厳しい経済制裁を受けている北朝鮮。しかし、高い生産力を誇っているという工場の従業員は「経済制裁の影響は全くない」と強調する。

 製糸工場従業員「制裁が強まるほど、逆に自分たちの力が強くなる。制裁を受けても問題ない」

 金正恩体制となってから4年余りが過ぎた今回の党大会で、金委員長は核開発と経済発展を同時に進める「並進路線」を自らの業績として誇示した。

 実際、平壌には新しいビルが立ち並び、市民が経済的に豊かな生活を送っているようにも見える。


■生活感がない病室
 しかし、金委員長肝いりで作られたという病院で、私たちはあることに気付いた。病室に生活感がないのだ。

 記者「入院患者がいるのに(病室の)布団はたたまれたまま」

 私たちが見せられているのは「豊かで美しい平壌」というごく一部の面で、それが市民生活の本当の姿なのか判断が難しい場面もあった。


■プラスのイメージになるものだけを
 党大会は結局、4日間にわたり開かれた。しかし、ほとんどの外国メディアには党大会そのものの取材は許可されず、大会の様子は夜間に予告もなくテレビで放送される映像でしか知ることができなかった。

 10日間にわたる平壌での滞在で私たちが単独取材を許されたのは、党大会の開催を祝い、金日成主席と金正日総書記の銅像の元に献花に訪れた市民の姿だった。外国メディアにはあくまで、党大会を成功させるためにプラスのイメージになるものだけを撮影させたいのだと強く実感した。

 今回の党大会で自らを「核保有国」と強調し、国内外に金委員長の新しい体制を印象づけた北朝鮮。今後、変化の兆しはあるのか、このまま孤立を深めるのか、その動向が注目されている。