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本屋大賞の宮下さん「私の誇り、私の勲章」

2016年4月13日 0:08
本屋大賞の宮下さん「私の誇り、私の勲章」

 全国の書店員が“いちばん売りたい本”を選ぶ本屋大賞が12日夜に発表され、大賞には宮下奈都さん(49)の「羊と鋼の森」が選ばれた。

 今回ノミネートされたのは又吉直樹さんの「火花」や辻村深月さんの「朝が来る」など10作品。その中で第3位にランクインしたのが、中脇初枝さんの「世界の果てのこどもたち」。戦時中に、満州に連れてこられた少女とそこで出会った2人の友人の国境を超えた友情物語だ。中脇さんは虐待をテーマにした短編集「きみはいい子」でも2013年にノミネート。こちらの作品は去年、高良健吾さん主演で映画化もされている。

 続いて第2位は、住野よるさんの「君の膵臓をたべたい」。膵臓(すいぞう)の病気で余命宣告を受けた女子高校生と主人公の男子高校生の交流を通し、生きることの大切さを描いた物語。この作品は小説家を目指す人などが作品を投稿するウェブサイトに掲載されていたもの。それが出版関係者の目にとまり書籍化が決定。デビュー作としては異例の発行部数50万部を記録している。

 そして今年、栄えある大賞に選ばれたのは、宮下奈都さんの「羊と鋼の森」。ピアノの調律に魅せられた1人の青年。その青年が調律という世界に飛び込み、人として、調律師として成長していく。物語はまるでピアノのしらべのように美しい文章でつづられている。作者の宮下さんは2012年にもノミネートされていて、今回2度目での受賞となった。

 投票した書店員からは、「激しい物語ではなく、静かで深い物語だったんですけど、だからこそ長くみんなに読んでほしい」「ためになるとかじゃなくて、自分の糧(かて)になる感じがある一冊」などの声が聞かれた。

 作者の宮下奈都さんは受賞について次のように話した。

 「初版6500部の小説が本屋大賞とるのは前代未聞じゃないかって言われて、私もちょっとそう思います。宮下の知名度の低さは抜群だと思いますし、そういう意味でも書店員の方々がどんなに応援してくださったか。これは私の誇り、私の勲章だと思って生きていこうと思います」