×

最近よく聞く「タックスヘイブン」って?

2016年4月11日 19:42
最近よく聞く「タックスヘイブン」って?

 キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。11日のテーマは、最近、ニュースでもよく耳にする「タックスヘイブン」。日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。


■タックスヘイブンとは?
 タックスヘイブンとは、法人税や所得税などの税率がゼロか極めて低い国や地域のことで、「ヘイブン」は、よく「天国=heaven」と間違われるが、「haven=回避地」で「タックスヘイブン=租税回避地」を意味する。

 バージン諸島やケイマン諸島、パナマ、モナコ、リヒテンシュタインなどがタックスヘイブンとして知られている。


■問題のパナマ文書とは?
 いま、問題になっているのは、パナマにある法律事務所から先日、金融取引の文書、いわゆる「パナマ文書」が流出し、タックスヘイブンを舞台にした各国の首脳らが関係する取引が記されていたことだ。

 明らかになった取引を見ると、アルゼンチンのマクリ大統領は、父親がタックスヘイブンに設立した2つの会社に重役として参加していた。これらの会社と大統領の関係について、検察当局は捜査の許可を裁判所に求めた。

 このほか、イギリスのキャメロン首相の名前が挙がり、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席の周辺も関与が指摘されている。


■タックスヘイブンは違法?
 タックスヘイブンは、必ずしも違法行為とは言えない。国ごとの税率の差を利用した節税行為ではあるが、国の指導者の場合、国民に税金を納めるように求める立場なのに、自分はタックスヘイブンに資産を移して税負担を軽くしようとしていたとすれば、道義的に問題となる。

 また、タックスヘイブンは不正なお金の出元をわからなくするマネーロンダリング(資金洗浄)や脱税の温床だと指摘されている。タックスヘイブンでは個人情報が厳格に守られていて、たとえ外国の税務当局などから情報開示を求められても、設立された会社や取引の情報はこれまでほとんど開示されてこなかった。このため、実体のないペーパーカンパニーが多く作られ、不正な蓄財などにつながっている。

 東京国税局の査察部OBは「タックスヘイブンに資金を動かすということは、ほとんど『脱税』か『マネーロンダリング』が目的。それ以外に、タックスヘイブンに会社を作る理由がない」と指摘する。


■タックスヘイブンを使った脱税の手口
 タックスヘイブンを使った代表的な脱税の手口を東京国税局のOBに聞いた。

 例えば、日本にある会社の代表Aさんが脱税しようと考えた。まず、Aさんは海外に実体のないダミーのB社を設立する。この時、B社の代表にはAさんではなく、Aさんから頼まれたBさんが就任する。この段階で、見かけ上はB社とAさんは関係がないように見える。

 同様にタックスヘイブンに会社Cを設立する。その上で、A社の資金10億円をニセの取引でB社に入金。そのままB社からC社に再度入金する。タックスヘイブンに入金された10億円は税金がかからず、本来日本で納めるべき税金を免れたということになる。

 日本の国税局がお金の流れを追おうとしても、ダミーのB社、取引の情報を開示しないタックスヘイブンが真相解明の妨げとなる。タックスヘイブンが障害になって、お金の流れを追えなくなるのだ。

■世界中で推計1700兆円
 こうしてタックスヘイブンに隠された資産は、2010年末には世界中で少なくとも1700兆円あったという推計もある。1700兆円ものお金に適正に税金がかけられたら、国が私たちのために使えるお金も、もっと増えるかもしれない。

 日本では、国税庁が2年前から、国外に合わせて5000万円を超える資産を持つ人は、財産の種類や金額を記載して提出することを義務付けている。

 来年からは、日本人が海外の金融機関に口座を持つ場合、その個人情報について日本の国税庁に集まる仕組みも始まり、日本からも外国の税務当局に情報を提供する。取り締まりは、世界的に強化される方向になっている。


■実態解明を
 税金は誰もが公平に納め、そのお金が社会の役に立っていると感じられることが基本である。今回の文書流出をきっかけに、各国が実態解明に乗り出し、国際的なルール作りをさらに進めることが大切だ。