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「核のごみ」合意形成に少人数議論“有効”

2016年3月30日 18:33

 原発から出る高レベルの放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分のあり方について、日本学術会議は30日、少人数による議論が社会的な合意形成に有効だとする報告を示した。

 原発を稼働すると発生する高レベルの放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」について、政府は、地下深くに埋めて最終処分する「地層処分」を前提に、処分に適した「科学的有望地」を今年中に提示するとしていて、数百人規模のシンポジウムを全国各地で行っている。これに対し、日本学術会議は去年、最終処分には社会的な合意形成が不可欠だ、などとする提言をまとめている。

 こうした中、学術会議の研究グループが30日示したのは、全国各地からランダムに選んだ20歳以上の男女101人を6~8人のグループに分け、それぞれのグループごとに「核のごみ」について、インターネットを使い議論や専門家との質疑をさせ、その前後の意識の変化を調べる「討論型世論調査」と呼ばれる調査の結果。

 それによると、議論の前と後では、「地層処分に賛成する」と答えた人の割合は、約33%から約49%に、「処分場を自らの自治体に受け入れる」と答えた人の割合は、約12%から約24%に、いずれも議論の後に増加したという。

 その一方、「地層処分に急いで着手するのではなく、時間をかけて国民的な議論をすべきだ」と答えた人の割合も、約60%から約75%に増えたという。研究グループはこうした少人数による討論型の世論調査は社会的な合意形成にも有効で、今後、規模を広げて調査を行いたいとしている。

 報告をとりまとめた今田高俊・東京工業大学名誉教授は、「地層処分そのものを否定はしていない。ただ政府が既定事実として地層処分を進め、処分場候補地を選ぶいまのやり方では信頼を得られない。信頼のないところに合意形成はできない」と話した。

 報告は5月をメドに正式にとりまとめられ、公表される予定。