×

LGBTめぐる“環境変化”を読み解く

2016年3月22日 17:46
LGBTめぐる“環境変化”を読み解く

 キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。22日のテーマは「LGBTめぐる“環境変化”」。日本テレビ・小栗泉解説委員が読み解く。


■7.6%
 今、性的少数者、いわゆる「LGBT」をめぐる環境が徐々に変わり始めている。

 LGBTとは、同性のことを好きになる人や、心と体の性別が一致しない人などのこと。20代から50代の約7万人に実施したインターネット調査によると、LGBTの人の割合は7.6%で13人に1人いると言われている。

 そんな中、国会では先週、LGBTの人たちが抱える課題について考える超党派の議員連盟の会合が開かれた。ここでは「LGBTの人たちに対する差別をなくす法律を作ること」を目標にしている。自民党でもLGBTに関するプロジェクトチームを作り、議論を進めている。

 動きが活発になっている背景には、自治体の動きがある。去年11月、東京都渋谷区と世田谷区が同性のパートナーを認める公的書類の交付を始めて話題になったが、来月からは三重県伊賀市、6月からは兵庫県宝塚市、7月からは沖縄県那覇市でも公的書類を交付する予定となっている。


■交付書類による同性カップルのメリットは?
 家を借りる契約をする時や病院で面会をする時など「公的な書類」を提示することで、男女の夫婦と同様に扱われやすくなる。

 こういった自治体の動きにあわせて企業も動き始めている。生命保険会社の日本生命や第一生命などは保険の契約者に対し、同性パートナーを保険金の受取人として指定するのに、公的書類があれば手続きが簡略化されるとしている。ただ、現状では同性パートナーを条例で認める渋谷区の証明書だけに限定されている。

 一方で、自治体の公的書類があればNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクで、いわゆる「家族割引」への申し込みが可能になる。さらに、日本航空・全日空では家族などで共有できるマイレージを同性カップルでも利用できるようになっている。


■社内制度変更の動きも
 さらに、来年度から社内の制度を変えようとしている会社もある。パナソニックでは、去年、「同性婚を考えている」という社員からの申し出があったことなどをきっかけに、4月から結婚や配偶者の対象を広げ、同性のカップルを結婚に相当する関係と認める方針だとしている。そして、慶弔休暇や介護などに関わる制度を利用できるよう検討しているという。

 また、NTTでも来月以降、性同一性障害の社員が社内で戸籍上の名前ではなく通称を使いたい場合などのガイドラインを設けることや、同性のカップルに結婚祝い金を支給することを検討している。

■法的拘束力は?
 ただ、自治体の公的書類や企業の取り組みなどには、法的拘束力はない。また、保険金の受け取りの際、同性のパートナーは法定相続人とは認められないため、税制上の優遇は受けられない。つまり、「同性婚」は「結婚」と同様の社会的待遇を受けられないということになる。

 これを変えようとすると、同性婚を結婚と同等と認める法律が必要になるが、超党派の議連でもそこまでは議論が進んでいないのが現状だ。

 LGBT問題に詳しい早稲田大学の棚村政行教授は「憲法の法の下の平等などに照らせば、同性婚が法的、社会的に認められないのは、問題。今の流れを受けて同性婚を認める法整備の議論を進めるべき」と話している。


■変化を積み重ねる
 LGBTという言葉が日本の行政を動かすようになってようやく半年。少しずつ、社会の仕組みにも変化が見られるようになってきた。差別や偏見を一気になくすことはできないが、こうした変化を積み重ねることで既成概念にとらわれず、個性を尊重する社会にしていきたいものだ。