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北への制裁決議「採択まで2か月」舞台ウラ

2016年3月11日 15:09
北への制裁決議「採択まで2か月」舞台ウラ

 核実験など挑発行為を続ける北朝鮮に対して国連の安全保障理事会は、これまでにない厳しい制裁決議を採択した。しかし、採択までに約2か月という長い時間がかかった。一体、何があったのか、水面下の動きを取材した。

 今月2日、安保理で前例のない「厳しい」制裁決議が採択された。

 アメリカ・パワー国連大使「今回の決議は、これまでのどの決議より、はるかに厳しいものです」

 決議には「北朝鮮への航空燃料の輸出禁止」「北朝鮮からの鉱物資源の輸入制限」「全ての貨物検査の義務化」などが盛り込まれた。


【スピード感】
 年明けから核実験を行った北朝鮮への対応に追われた安保理。当初、目指したのはスピード感を持った採択だった。

 日本の吉川国連大使「迅速性。しかも、新しい決議で内容の強いものを目指したい」

 今年1月から安保理メンバーになった日本。トップである吉川大使が1月13日に向かったのは、同じ安保理メンバーのスペインのオフィス。

 スペイン国連大使「日本大使を歓迎します」

 吉川大使は、メンバー全員に水面下での働きかけを行っていた。

 吉川大使「我々は制裁・制裁と言ってるのではなく、対話をずっと続けてきた。最高レベルで合意もできた。しかし、踏みにじられてきた。きっちりとした対応をしなくてはいけない」

 しかし、協議は思うように進まず、時間だけが過ぎていく。そうした中、まとまらない安保理をあざ笑うように北朝鮮はさらなる挑発行為に出た。


【なぜ、協議は難航した?】
 ある国連関係者「中国の動きを読み間違えた。今回はすんなり納得するかと思っていた」

 北朝鮮と関係が近いとされる中国。今回、核実験を行う「事前通告」などがなくメンツを潰され、厳しい制裁に協力的な姿勢を取るのではとの見方が広がっていた。しかし、具体論に入るとアメリカとの話し合いで「慎重姿勢」を示し、協議は難航したのだ。

 中国大使を直撃した。

 中国・劉結一国連大使「言うことはありません。(Qアメリカとの差はどこに?)もうその質問には答えた」

 最終的には中国が強い制裁を受け入れた形だが、採択まで約2か月かかった。異例の長期戦になった裏側には中国の存在があったのだ。

 さらに、ある国連関係者は「採択はゴールでなくスタートだ」と指摘する。

 パワー大使「今回の制裁は包括的なもので、北朝鮮がうまく逃れるような道は残っていないはず」

 吉川大使「この先、大事なのは、決まった制裁をいかに実行に移していくかです」

 これまで決まった制裁を巧妙な手口で逃れてきたという北朝鮮。

 北朝鮮の人「今までも制裁を受けて生きてきたし、新しい制裁を受けても心配していません」

 制裁に賛成した中国が、現場で着実に取り締まりを実行するかがカギを握る。

 ある国連関係者は「この制裁で北朝鮮が変わらなければ、国連の存在意義が問われる」と話している。国際社会は逃げ道を与えず北朝鮮の情勢に変化を与えられるのか。制裁の真価が問われるのはこれからだ。