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“寿命100年” リサイクルで羽毛を活用

2016年3月2日 17:23
“寿命100年” リサイクルで羽毛を活用

 キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。2日のテーマは「羽毛のリサイクル」。日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。


■ヨーロッパでは当たり前?“羽毛リサイクル”
 羽毛は元々長持ちする丈夫な天然素材で、“寿命は100年”とも言われている。ヨーロッパでは、羽毛製品を回収するためのボックスが教会などに設置されており、羽毛はリサイクルするものという考え方が一般的となっているそうだ。実は、日本でも羽毛をリサイクルして、製品に活用するプロジェクトがある。


■全国から羽毛製品が集まる“河田フェザー”
 三重県にある、羽毛の再生加工をしている“河田フェザー”には、全国のメーカーなどから使われなくなった羽毛製品が集まってくる。河田フェザーの執行役員・黒田さんはこう話す。

 「ダウンジャケットとか羽毛布団が、1万枚くらい集まってきます」


■リサイクル工程は
 回収された羽毛は、工場で8時間もの工程を経て新たな羽毛に生まれ変わる。布団から取り出された羽毛は、ちりやホコリを取り除いてから、大型の洗濯機へ。不純物の少ない軟水の湧き水で汚れを洗い落とした後、120℃から140℃の高温で乾燥と殺菌を行う。加工前の羽毛と、洗浄・乾燥後の羽毛を比べると、真っ白になり、ふんわりしているのがわかる。さらに、独自の厳しい基準の検査を経て、品質の良い“再生羽毛”が誕生することになる。黒田さんはこのプロジェクトについてこう語る。

 「羽毛が循環資源というのは、まだまだ知れ渡っていません。当たり前に羽毛というのは捨てたらダメなんだ、循環資源なんだなということを知っていただくことが一番大事。次の世代に羽毛を残していただけたらと思います」


■生まれ変わって新たな製品に
 このプロジェクトに参加しているアパレルメーカーでは、“再生羽毛”を使ってダウンジャケットやコートなどを販売している。参加しているメーカーの中には、リサイクルボックスを店舗などに置いて羽毛製品の回収を呼びかけているところもある。


■羽毛リサイクルのメリット
 また、今後こうした羽毛のリサイクルが広がっていけば、羽毛製品の生産や価格の安定につながると考えられており、さらには募金もできる。河田フェザーは赤い羽根共同募金会と連携しており、使わなくなった羽毛製品を共同募金会に届けると河田フェザー側が買い取ることで、地域の福祉施設などへの寄付につながる。現在は、三重県や山口県の赤い羽根共同募金会のみが行っており、「今後は全国に広げていきたい」としている。


■自治体の取り組み
 さらには、自治体の中にも、こうした羽毛のリサイクルに取り組むところも出てきている。神奈川県藤沢市では、去年から羽毛布団を回収しており、これまでに約1万枚に上ったそうだ。回収した布団は、山梨の布団メーカーで新たな製品に生まれ変わるということだ。藤沢市以外にも、この山梨のメーカーを通じて、東京都港区、神奈川県横浜市、千葉県柏市など、19の自治体が羽毛布団のリサイクルを行っているということだ。


■今あるものを大切に
 ゴミとして捨ててしまってはそれでおしまいの羽毛も、リサイクルすれば100年は使える。汚れたら洗ってまた活用する--限りある資源を大切にすることを、冬の布団を片付ける前に考えてみてはいかがだろうか?