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イギリス“EU離脱”の是非に揺れる世論

2016年2月26日 16:29
イギリス“EU離脱”の是非に揺れる世論

 イギリスでは、EU(=ヨーロッパ連合)からの離脱を求める声の高まりを受けて、その是非を問う国民投票を今年6月に行う。世論が真っ二つに分かれるイギリスの今を取材した。

■「EU離脱」を主張するイギリスの若者たち

 ロンドン中心部にある大学のキャンパス。学生たちが道行く人に熱心にビラを配っていた。「イギリスはEUから抜け出すべき」と主張する若者たち。彼らは国内で増加するある存在に懸念を強めていた。

 学生「誰でもイギリスに住めるのはよくない」

 キャメロン首相は20日、EUからの離脱の是非を問う国民投票を6月23日に行うと発表した。

 キャメロン首相「改革後のEUで、イギリスはより安全に、より強くなり経済も上向く」

 「EUに残ることがイギリスのためになる」と強く訴えるキャメロン首相。なぜ国民に離脱の是非を問うことになったのだろうか?

■国民の一部が不満を募らせている理由

 主な理由のひとつは「移民の問題」だ。EUに加盟していることで、ここ数年EUの域内からの移民が急増した。私たちは、東ヨーロッパからの移民が多いイギリス東部の町、ボストンを訪ねた。ラトビアから来た移民のコバレンコさん。子ども2人と3年前から公営住宅に住んでいる。

 コバレンコさん「この家はとてもいいわ。家賃は安いし、小さい子どもがいるので助かります」

 家賃は相場よりも2割ほど安いということで、条件を満たせば、移民でも条件のいい公営住宅に住むことができる。しかし、このような移民らへの社会福祉などに税金が使われていることに対し、国民の一部が不満を募らせているのだ。

■キャメロン首相とジョンソン・ロンドン市長

 こうした中、キャメロン首相は、去年5月の総選挙でEU自体のルールを変える「EU改革」を実現した上で、EU離脱の是非を問う国民投票を行うことを公約に掲げて勝利。今月19日には、EUの首脳らと協議を行い、急激に大量の移民が流入した場合、加盟国は移民への社会福祉を4年間制限することなどで合意した。さらに、EUが今後、定める経済ルールにイギリスが従わなくても良いという合意も勝ち取った。

 キャメロン首相「EU内で特別な地位をイギリスに与える合意だ」

 成果を強調するキャメロン首相。これで、国民にEU残留への理解が得られると自信を見せていた。

 しかしこれに待ったをかけた人物がいた。ボサボサ頭がトレードマーク。国民的人気があり将来の首相候補ともいわれるジョンソン・ロンドン市長だ。キャメロン首相の長年の盟友でありながら、21日、公然とEU離脱への支持を表明したのだ。

 ジョンソン市長「EUとの合意がイギリスにどのような主権を取り戻すというのか」

■イギリスがEUから離脱した場合の影響

 残留への追い風になるはずの「EU改革」の合意後に実施された各社の世論調査でも、世論は残留か離脱で拮抗(きっこう)していて離脱が上回る結果も出ているのだ。イギリスがEUから離脱した場合どのような影響があるのだろうか?

 みずほ銀行ストラテジスト 本多秀俊氏「EU離脱は、経済的な自殺行為に近い」「EUの一部であることによって、ロンドンが世界の金融市場の中心でありえている。EUから離脱して、今後も同じ規模で継続するのは不可能だと考えます」

 実施まで4か月を切った国民投票までに国民から、どう支持を取り付けていくのか。キャメロン首相が目指す残留への道のりはまだ見えていない。