“本命”クリントン氏苦戦!支持者に何が?
先週行われたアメリカ大統領選挙の予備選第2戦。本命候補と見られていたクリントン前国務長官を破り、サンダース上院議員が勝利した。今、支持者の間で何が起きているのか。長島清隆記者が取材した。
■大本命を抑えた無名候補
2月7日。予備選挙の投票を目前に控えたニューハンプシャー州のドーナツ店に、民主党のクリントン前国務長官が突然、姿を現した。
「この子は将来、初の女性大統領になりたいから、あなたに勝って欲しくないと言うの」
居合わせた客がこう述べると、クリントン氏は――
「私が勝ったら、あなたは初の女性大統領として“ガラスの天井”を破る心配をしなくて済むわよ」
元大統領を夫に持ち、上院議員や国務長官を務めたクリントン氏。早くから民主党候補者レースの大本命と見られていた。しかし、ニューハンプシャー州で勝ったのはサンダース上院議員。選挙戦が始まるまでは無名の存在だった。1月21日の講演でサンダース氏はこう述べた。
「私は大統領として、全ての公立大学の授業料を無償にする」
自らを「民主社会主義者」と称するサンダース氏が掲げるのが、この“公立大学の授業料無償化”だ。
■若者の支持が集まるワケ
サンダース氏の支持者は、若い世代が多いのが特徴。大学生が中心のグループを訪ねると、サンダース氏の大学授業料無償化を支持するプラカードを作っていた。アメリカの大学生の約7割は、学生向けのローンを利用している。卒業時点の借入残高は平均2万9400ドル、日本円にして約330万円だ。20年間で借入残高は3倍に増加した。
ニューヨークの大学生、シェリーさんもサンダース氏を支持する1人。シェリーさんは経済的な負担を軽くするため、実家から通える大学を選んだ。それでも、1学期分の学費の請求額を見せてもらうと、その額は約1万ドル(114万円)。シェリーさんはこう話す。
「学生は卒業してからも借金のことが頭から離れません。いつもどうやって返済するかを考えています」
■母親は誰を支持?
一方で、シェリーさんの母・モーリーンさんは、サンダース氏を支持する娘をたしなめる。
「実際タダのものなどありません。娘にとっては無料かもしれないけれど、私が税金を払う事になります。若者たちはそこまで考えられないんです」
モーリーンさんは、アメリカ初の女性大統領誕生を期待してクリントン氏を支持している。その意思は固い。
「私は変わらずヒラリー氏だけを支持するわ」
それを聞いたシェリーさんの反応は――
「困ったわ…私はサンダース氏こそが将来の大統領だと思います」
■年齢層で分かれる支持
NBCテレビの出口調査によると、ニューハンプシャー州では30歳未満の83%がサンダース氏に投票し、勝利の原動力となった。一方、65歳以上ではクリントン氏に投票した人の方が上回っている。クリントン氏は自身の経験をアピールし、幅広い問題に目を向けるよう呼びかける。
「私は1つの問題だけを争点にする候補者ではありません。我々には多くのやるべきことがある」
2月20日にネバダ州で開かれる党員集会はクリントン氏が優位とみられているが、ニューハンプシャー州で勝利したサンダース氏が追い上げている。若者たちの票はサンダース氏をどこまで勢いづけるのだろうか。