×

部屋ガラーン…新時代の価値観ミニマリスト

2016年2月18日 3:09
部屋ガラーン…新時代の価値観ミニマリスト

 キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。17日は「ミニマリスト」について、日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。

 ■「最小限主義者」

 「ミニマリスト」この言葉をご存じだろうか。去年の新語・流行語大賞の候補にもなった言葉だ。ミニマリストとは、英語の「minimal(ミニマル)」という言葉からできた造語で、直訳すると「最小限主義者」。物をなるべく持たずに暮らす人のことだが、2010年頃からアメリカで流行し始め、日本でも今、若者を中心に広がっている。

 ■「マネしたいけど、できないだろうな…」

 書店にはミニマリストを紹介する本が所狭しと並べられていた。

 三省堂書店・牧野優店長「数年前から片付けの本はずっと売れておりまして、特に去年の夏ぐらいから『ミニマリスト』の本が出始めまして、老若男女問わず、ずっと今年まで売れております」

 その中のひとつ『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』の著者、佐々木典士さんの職場を訪ねた。佐々木さんは書籍の編集の仕事をしている。同僚の机と比べると、その差は一目瞭然。佐々木さんの机には資料ひとつ置いていない。

 ミニマリスト・佐々木典士さん「忘れ物も減ったんで、ここにメモがあるとめちゃくちゃ目立つんで。自分にとっては能率が上がったかなって」

 佐々木さんの同僚「それだけスッキリとした中で仕事をされてるので、頭の中もスッキリ整理されている方だなという印象はうけてますね。マネしたい気持ちはありますけど、できないだろうなとは思ってます」

 ■台所は一番充実「食器が1人分ある」

 ミニマリスト・佐々木さんの自宅にお邪魔した。浴室と台所のある廊下を抜けると5畳ほどの居間。明るい日差しが差し込む室内には、机といす以外には何もない。シンプルな空間だが、これで生活できるのだろうか。

 ミニマリスト・佐々木典士さん「衣食住足りますね。十分すぎるほどだっていう、自分では、感覚なんですけど。寝るときはここの収納のマットレスを出して、ここで並べて寝てるんですけど」

 クローゼットの中には、同じトレーナーとシャツとジーパンがそれぞれ3枚ずつ、毎日同じ組み合わせ。机といすは最近買ったばかりで、勉強も仕事も食事も全てここですませるという。お風呂場には石けんが1つだけ。頭はお湯で洗うだけだそうだ。

 ミニマリスト・佐々木典士さん「台所は、一番うちの部屋だと充実してると思うんですけど、食器が1人分あったりとか。自炊はまだやっているので、1人分作る調理道具はそろっているんですけど」

 ゴミもあまり出ないそうで、いつのまにか環境に優しい暮らしになっていたと話す。

 ■モノより体験

 実は佐々木さん、昔はカメラや本やCDなど色々な物を集めていて、部屋がモノで溢れていたそうだ。そんなある日、インターネットで「ミニマリスト」という言葉に出会い、1年かけて持ち物を整理したという。

 ミニマリスト・佐々木典士さん「お金はそんなにたまらないですね。ミニマリストの人って共通して認識していることがあって、『モノより体験』に使うっていうのを皆意識してるんですね。体験とか誰かとどこかに行った経験とかって、モノはすぐに飽きちゃうんですけど、意外と色あせない。喜びが長続きしやすいと言われている、経験の方が」

 ■「持たざる暮らし」を後押し…様々なサービス

 こうした「持たざる暮らし」を後押しする様々なサービスも登場している。

 『てぶらでどっとこむ』では家具や家電、『ハッチ』は布団…などレンタルサービスは色々あるが、『エアークローゼット』は、洋服が借りられるサービスだ。

 利用者の好みを登録しておくと、スタイリストがその人の好みに応じた洋服3着を選び、箱に入れて自宅に送ってくれる。毎月7344円で、送り返せばまた新しい3着が何度でも送られてくる。気に入ったら買い取ることもできるそうだ。収納を気にせず、いろんな洋服を楽しむことができそうだ。

 増えすぎたものを有効活用するサービスもある。『古着deワクチン』というサービスは、ネットで申し込み、1000円の手数料を払って、ダンボール箱にいらなくなった衣類やバッグ、靴などを詰めて送ると、途上国の子どもたちにポリオワクチンが届くという仕組みだ。

 また『チャリボン』は、古本を送ると、買い取り金額を社会貢献活動を行っているNPO法人などに寄付できるサービスだ。自分にとってはいらなくなったモノを、他人の役に立てることができるのだ。

 ■新たな時代の価値観

 きょうのポイントは、「“持たない”ということ」。何でも手に入る世の中、身の回りにモノはあふれている。FacebookなどSNSの広がりで、いまはモノではなく、体験でも自分の生き方を表し、満足感を得ることができるようになった。

 そんな中で生まれた「持たない」という発想。何に幸せを感じるか、モノに代わるものは何なのか、新たな時代の価値観がいま、生まれている。