×

遅れている火山防災対策 強化の必要あり

2016年1月3日 23:25

 鹿児島県の口永良部島や神奈川県の箱根山など、去年は全国各地で火山の噴火が相次いだ。こうした中、今年は伊豆大島の三原山の噴火から30年。雲仙普賢岳の大火砕流の発生から25年となり、国などは改めて火山防災対策の強化を進める必要がある。


【三原山噴火から30年】
 東京都心から南へ約120キロの伊豆大島は、三原山が噴火を繰り返すことで出来た島だ。1986年11月に始まった三原山のマグマ噴火では、溶岩流が山を下り、住宅地に迫った。

 約1万人の住民は迫り来る溶岩流の危険から、助け合いながらバスや車を使って救助船の待つ港までたどり着き、無事に島から逃げることが出来たのだ。

 今年は噴火から30年、島の人口は減り、高齢化が進んだ。当時、避難の中心を担った島にあるバスの保有台数も大幅に減少している。

 この間、東京都や大島町では各家庭に防災無線の聞ける端末を配備したり、住宅地を溶岩流が直撃しないように溶岩の流れを変えてしまう、巨大な堤防を設置したりして、次の噴火に対して備えを進めている。

 しかし、高齢化の進んだ島では、1人の犠牲者を出さなかった前回と同じようにお互いに助け合ってスムーズに避難が出来るのかという指摘もある。


【大火砕流発生から25年】
 また、長崎県の島原半島にある雲仙普賢岳の大火砕流は発生から今年で25年。山を高速で駆け下る火砕流の恐ろしさを初めて目の当たりにした災害で、警戒にあたっていた消防団員ら40人以上が犠牲となった。

 かつて火砕流が流れ下った山の斜面には草木が茂り、緑が戻りつつあるが、今も山頂には溶岩ドームがせり出している。専門家は、溶岩ドームの温度は下がり、火砕流になる心配はないものの、大規模な崩落や更なる土石流対策は今後も続けていく必要があると話す。


【遅れている火山防災対策】
 気象庁が24時間体制で監視する活火山は全国で47あるが、このうち噴火時などに危険な範囲や必要な防災対応を5段階に示した噴火警戒レベルを導入しているのは32火山ある。

 しかし、内閣府によると、具体的な避難計画を策定しているのは被害が想定される130市町村のうち15%の20市町村にとどまっており、地震や洪水などに比べると発生頻度の低い火山防災対策は遅れている。

 火山噴火予知連絡会の藤井会長も「御嶽山の火山災害も含め、ここ最近発生している噴火は規模の小さいもので、改めて人の住む地域に直接影響を与えるような規模の大きな噴火に備えた防災対策を進めておく必要がある」と話している。

 今年は2つの大きな火山災害からの節目の年になるほか、東日本大震災からは5年になる。三陸沖で巨大地震が発生して全国で火山活動が活発化した9世紀の状況に似ていると専門家の指摘もある中、国や自治体は改めて火山防災対策の強化を進める必要がある。