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今年スタート「全国がん登録制度」とは?

2016年1月2日 22:21

 1年間に日本人の約100万人が、がんになる時代。がんの治療などに生かすため、全国のがん患者の情報を一元的に管理する「全国がん登録制度」が今年から始まる。


【仕組みがなかった「がん患者の集計」】
 国立がん研究センターの推計によると、去年1年間に国内で新たに98万人もの人が、がんと診断されている。日本人の2人に1人がなるとも言われるほど、がんは誰もがなり得る病気だが、実は日本には、全国のがん患者の数を集計する仕組みがなく、年間に何人が、がんになっているかなど正確なデータを把握することができなかった。

 そこで、国は今月から、がん患者の個人情報や治療歴、生存率をデータベース化して一元管理する「全国がん登録制度」を新たに始めることにしている。

 がんと診断されると自分の意思に関係なくデータが必ず登録されるため、個人情報の管理が課題だが、集めたデータを分析することで、がんの予防や治療・研究に大きく役立つことが期待されている。


【3つの柱「がん対策加速化プラン」とは】
 一方、政府のがん対策推進基本計画では「2007年度から10年後の2017年度までに75歳未満の死亡率を20%減少させる」と目標に掲げているが、このままでは「17%減少」にとどまり、目標達成は難しいと予測されている。

 そこで、政府は去年、「予防」「治療・研究」「がんとの共生」を3つの柱に掲げた「がん対策加速化プラン」を打ち出した。

 「予防」については「がん検診」や「たばこ対策」と並んで、がんやがん患者に対する正しい知識を持ってもらうため、「学校におけるがん教育」を行うとしている。

 「治療・研究」については「がんのゲノム医療」の実現に向け、具体的な実態調査が始まるほか、小児がんや思春期世代のがんにも取り組むとした。

 「がんとの共生」では、治療のために仕事を辞めざるを得ない実態がある中、がん患者の就労支援や治療に伴う副作用の軽減を目指すとしている。

 さらに、症状が重くなった患者の痛みを抑えるだけでなく、がんの告知直後から患者や家族が抱える様々な心身の苦痛を和らげる「緩和ケア」の普及なども掲げている。

 今や「国民病」とも言えるがん。患者や家族、研究者、行政などが連携して予防や治療を進めて行けるかが課題となっている。