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都心の空に航空機は増えるのか

2016年1月2日 22:16

 国土交通省は、東京オリンピック・パラリンピックのある2020年までに、羽田空港における国際線の発着便数を現行の年間6万回から約1.7倍の9万9000回に増やすことを検討している。


【「発着便数の増加」が命題】
 現在、羽田空港と成田空港が結んでいる海外の就航先は92都市で、パリの空港の約半分、北京やソウルの空港よりも少ないのが現状だ。

 国土交通省は「日本の経済成長を支えていく上では諸外国との結びつきを深めることが重要だ」として、空港の発着能力の強化、すなわち「発着便数の増加」を命題としてきた。しかしながら、羽田空港の発着便数は現状では限界に近づいている。


【首都上空を「低高度」で飛ぶ?】
 そこで、国土交通省が増便するための方策として打ち出そうとしているのが、「首都上空」を飛ぶ新たな飛行ルートだ。

 検討されている新ルートは午前6時から10時半の時間帯と、午後3時から7時までの時間帯に運用されるもので、東京都心の上空を「低高度」で飛行するのがポイントだ。

 例えば、着陸の際に通過する渋谷付近では、高さ634メートルの東京スカイツリーよりも低く飛び、品川区の大井町付近では、333メートルの東京タワーよりも低い高度で飛行することになる。

 国土交通省は、今年夏までに新たな飛行ルートと便数、ルートを使う航空機の機種などを含めた運用方法を策定する方針で、去年の夏以来、新ルート周辺の住民に対して説明会を開いている。


【住民からは懸念の声も】
 しかし、住民からは、騒音、増便による飛行の頻度、落下物や事故への懸念の声が多く上がっている。騒音の影響を小さくするために高度を上げたり、午前6時からの飛行開始をさらに遅くしたりするなどの対策を求める意見も寄せられている。

 国土交通省は先月、住民のこうした声に応えるため、着陸体勢に入る東京都北部の上空では、降下開始の地点まで出来るだけ高度を高く保って飛行することや、ボーイング787など低騒音とされる機体を使えば空港使用料を減額するなどの方策を提示した。

 石井国土交通相は「地域住民の方々と丁寧なコミュニケーションを継続して、関係自治体とも連携・協力しながら取り組んでいきたい」と述べている。

 日本への観光熱の高まりから、羽田空港に対する海外からの乗り入れの需要はますます拡大している。来月には、LCC(=格安航空会社)のピーチが羽田~ソウル便を就航させるなど、LCCによる羽田空港の参入が相次ぐ。

 また、現在は夜間と早朝に限られている日米を結ぶ路線に昼間の時間帯の路線を新設するか日米交渉が行われている。

 限界と言われる羽田空港の発着枠。増便の切り札とされる「首都上空」の新飛行ルートを、周辺住民の理解を得ながら実現させることができるのか。今年の取り組みが注目される。