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2016年 労働分野の動きと課題

2016年1月2日 21:59

 今年も、私たちの働き方に関する様々な動きが予定されている。

【1.労働基準法の改正】
 政府は去年の通常国会で、安全保障関連法の成立を優先し、野党や労働組合が「残業代ゼロ法案だ」として反対している「労働基準法」改正の審議を諦めたが、今年は予算案決定後の4月以降の通常国会で審議入りするのか、反発に配慮して秋の臨時国会に先送りするのか、その判断が注目されている。

 改正案では、年収1075万円以上の高度な専門職の人で本人が同意すれば、労働時間ではなく成果に応じて給与が支払われる新制度の導入が可能になる。この場合、「裁量労働制」では払われる休日出勤手当などもない。

 また、改正案は「裁量労働制」の対象職種を「商品の企画立案を行う営業職」などにも広げるとしている。「裁量労働制」は、労働者が働く時間を選ぶため、柔軟な働き方ができるとされているが、過労死した労働者の遺族らは「若い従業員に裁量はなく、長時間労働や過労死を招く」と改正に反対している。


【2.ブラック企業対策】
 厚生労働省は今年も、長時間労働や残業代未払いなど労働基準法に違反するブラック企業やブラックアルバイトに対し、積極的に改善指導を行う方針。中でも社会的影響力のある大企業が複数回指導されても改善しない場合は、去年と同様に企業名を公表するとしている。

 国内で人手不足が深刻化して労働者への負担が増す中、企業の労働環境には厳しい視線が向けられている。今後、企業側から「人件費を減らして、利益を生み出す」という仕組みを改めて、良い人材を確保するために労働条件や賃金を引き上げる傾向が現れるかどうかが注目されている。


【3.非正規労働者の保険・年金制度改正】
 今年10月には、非正規労働者の医療や年金をめぐる新しい制度も始まる。これまで労働時間が週30時間に満たない非正規労働者は、企業の保険・年金制度に加入できず、個人で「国民健康保険」や「国民年金」に加入していたため、保険料の未納や滞納が問題になり、老後の年金が受け取れないなど本人の不利益につながっていた。

 しかし、10月以降は従業員501人以上の企業で週20時間以上働き、月給が8万8000円以上ある非正規労働者は、企業の医療保険と厚生年金に加入することになる。保険料の半額は企業が負担し、将来受け取る年金額は「国民年金」より多くなるため、老後の安定につながる見込み。