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EU離脱の是非 英国 国民投票の行方は?

2016年1月1日 23:13

 2015年5月のイギリス総選挙は、EU(=ヨーロッパ連合)からの離脱問題が争点の一つとなった。イギリスでは、EU域内からの移民の流入に歯止めがかからず、この3年間で約2倍にまで急増。このため、移民により福祉や公共サービスが圧迫されているとして不満が高まり、EUからの離脱を求める声が相次いでいた。

 キャメロン首相は「EUに加盟していることで人やモノなどが自由に行き来でき、経済的なメリットにつながる」などとして、EU残留を主張。一方、EUからの離脱を訴えるイギリス独立党は、移民に反発する世論の高まりを背景に支持を集めていた。

 選挙戦でキャメロン首相は、EU離脱派に配慮して選挙後にEU離脱の是非を国民投票で問うことを公約に掲げた。選挙の結果、キャメロン首相率いる保守党は辛くも単独過半数を確保。しかし、イギリス独立党が全体の約13%の得票数を獲得し、一定の存在感を見せつけた。

 キャメロン首相は選挙後、国民投票を有利な状況で迎えるため、イギリスとしてのEU改革案をまとめた。EU加盟国からイギリスに入国した移民に対し、雇用給付や住宅支援など社会保障費の一部を4年間給付しないなど、4項目が柱となっている。

 キャメロン首相は、この案を2015年12月に開かれたEU首脳会議で示して理解を求めたが、イギリスに多くの移民を送り出しているポーランドなど4か国は「移動の自由」というEUの基本理念を損なうものとして反対を表明。今後、改革案をまとめる作業は難航が予想される。

 一方で、イギリスが離脱すればEUの経済力が低下し、EUの存在意義自体にも疑問符がつきかねないことから、ドイツのメルケル首相は「イギリスの残留が全加盟国の利益となることは明らかだ」と述べ、離脱を防ぎたい考えを示している。

 イギリス総選挙後の世論調査では、残留支持と離脱支持が拮抗(きっこう)していて、一部の世論調査では離脱支持が残留を上回ったこともあった。

 こうした中、キャメロン首相は2015年11月、国民投票の結果がEU離脱となった場合、再交渉や、やり直し投票はせず、「離脱する」と明言して、態度を決めかねている人をけん制する強気の姿勢も見せた。

 最新(2015年12月)の世論調査(Ipsos Mori)では「残留53%」「離脱34%」「決めていない11%」と、残留支持が上回っている。

 今後は2月に予定されているEU首脳会議までに、キャメロン首相が4項目の改革案について、どこまで首脳らの理解を得られるかが焦点となる。キャメロン首相としては早期にEU改革を実現させ、国民投票に持ち込みたい考えとみられる。

 キャメロン首相は国民投票までの告知期間を4か月設けるとしていることから、議論が順調に進んだ場合、国民投票は早ければ夏にも行われる見通しだ。