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血液がピンチ 輸血の血液、不足の懸念も

2015年12月9日 4:09
血液がピンチ 輸血の血液、不足の懸念も

 キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。8日は、「血液が足りない」をテーマに日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。

 ■献血する若者 15年前の半数以下

 6日から都内で始まった献血キャンペーン。学生ボランティアが道行く人々にサンタクロースの格好で献血を呼び掛けた。日本赤十字社では今、特に若者への献血の呼びかけに力を入れている。献血する若者が減っているのだ。

 献血できる年齢は16歳~69歳だが、10代と20代の献血者の数は、例えば20代で見ると、15年前は約192万人だったのが、約86万人と半分以下にまで減っていて、若い層での減少が顕著になっている。

 ■輸血用の血液、不足する懸念も

 その一方で、血液を必要とする人は1日平均で3000人を超え、年々増えている。「血液を必要とする人」というと、けがで出血している人や、手術を受ける人をイメージしがちだが、実際には、がんや白血病などの治療で輸血をする人がほとんどだ。例えば、抗がん剤を打つと体内で血液ができにくくなることから、輸血をするといったケースだ。

 けがをしたり病気になったりする可能性は誰にでもあり、他人事ではない。しかし、このまま少子高齢化が進めば、血液を採れる元気な若者が減って、病気などで血液を必要としがちな高齢者が増えるため、輸血用の血液が足りなくなるのではないかという心配がある。

 日本赤十字社の試算では、輸血を必要とする人がピークを迎える12年後、2027年には、献血する人が約85万人不足するという。

 ■献血が減るのは「冬」

 長期的にみて血液が足りなくなってきているわけだが、1年という区切りで見た場合にも献血が減る季節がある。冬だ。寒いと外出する人自体が減るし、風邪などで体調を崩す人が多くなるため、献血が減るのだ。

 血液は、実は、長期保存ができない。血液の中にある赤血球は3週間で、血小板は4日で輸血に使えなくなってしまう。そのため、年間を通じて常に献血者を確保する必要がある。

 ■外国の取り組み

 献血者の確保には日本以外の国もあの手この手で取り組んでいる。例えば、献血有給休暇があるイタリア、朝8時から夜10時まで献血できるオランダ、韓国の高校ではボランティアの授業があり、1回の献血が4時間分に充当される。

 ■占い・漫画・ドーナツ…日本も工夫

 日本でもより気軽に献血してもらえるよう、工夫を凝らした献血ルームが増えてきている。横浜市に今年できた献血ルームは、「本が読めるカフェ」がコンセプトの落ち着いた内装で、人気の漫画や雑誌などを1000冊以上そろえている。若い人に来てもらえるよう、タロット占いや手相占い、ドーナツやアイスクリームの無料提供など、サービス面でも工夫をしている。献血に協力した人は、次ように話していた。

 献血に来た人「マンガとかもあって、本当にカフェみたいな感じで落ち着ける」「血液検査の結果とかも分かるので、健康診断で病院に行くよりは手軽にできるかなと。あと、ちょっと社会貢献している気分にもなれるので」

 ■命を救う献血…所要時間は40分

 実際の献血の流れをおさらいしておこう。(1)まず問診票を記入する。(2)次に医師による問診と血圧測定。(3)血液の濃さを確認するための少量の血液をとる検査を受けたら、(4)いよいよ採血だ。全てを含めても所要時間は通常40分ほどだという。その40分で誰かの命を救えるかもしれないのだ。

 ■身近な社会貢献

 きょうのポイントは「身近な社会貢献」。採血に怖いイメージを持つ方もいるかもしれないが、針はもちろん使い捨て、血液検査で自分の健康状態を確認することもできる。社会貢献といいながら、あす自分が必要とする立場になるかもしれないこの献血という制度、あらためて考えてみてはどうだろうか。