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格安運賃認める…タクシー業者、国に勝訴

2015年11月20日 18:26
格安運賃認める…タクシー業者、国に勝訴

 国によるタクシー料金の規制。これに初乗り510円で営業を続ける大阪の格安タクシー会社が国を相手に起こしていた裁判で、“格安運賃を認める”初めての判決が言い渡された。

 大阪市内にある格安タクシー会社「ワンコインドーム」。初乗り料金はワンコイン「500」円に10円上乗せした510円で営業を続けている。実は、この格安の料金設定が、“違法営業”とされている。

 2002年、小泉政権のもとで行われたタクシーの規制緩和。タクシーの台数制限の撤廃や、新規参入で、タクシーは、一気に増加。ワンコインや運賃半額といったサービスが過熱していった。

 1台あたりの収入が減るため、各社は次々とタクシーを投入し、客の奪い合いがさらに激しくなるという、生き残りをかけた戦いが繰り広げられてきた。

 そんななか、国は、過剰な値下げ競争を是正するため、2013年、改正タクシー特別措置法を国会で成立させた。中型タクシーなら、大阪では、初乗り運賃が660円~680円(2キロ)、東京では700円~730円(2キロ)、京都は600~620円(1.7キロ)、神戸が650~680円(1.8キロ)というように地域ごとに運賃の上限と下限を決める「公定幅運賃」での営業を義務付けた。

 現在も、制度に従わず、格安料金で営業を続ける会社は、大阪ではワンコインドーム、大阪エムケイ、壽タクシー3社のみ。“違法状態”での営業のため事業許可取り消しなどの行政処分の対象となる。このため、ワンコインドームは、「憲法が保障した『営業の自由』を侵害するもの」だとして行政処分をしないよう国を相手に裁判を起こしていた。

 そして、20日、この「公定幅運賃」をめぐる初めての判決が言い渡された。

 大阪地裁・裁判長「近畿運輸局長は運賃を変更すべきことを命じてはならない」

 大阪地裁は、「近畿運輸局長は、原告らタクシー事業者の運賃や経営状態などをまったく考慮せずに公定幅運賃の範囲を指定したものであるから、その判断は合理性を欠くものと認められる。範囲の指定には、裁量権の逸脱濫用がある」などとして、ワンコインドーム側の訴えを認める判決を言い渡した。

 ワンコインドーム・町野勝康社長「きょうは勝たせていただき、ほっとしていますが、(運賃の)低廉化なくして活性化はない」

 ワンコインドーム・吉岡和仁常務「『右にならえ』で(値下げを)考える事業者も恐らく出てくるのではないかなと。結果、利用者が、よりタクシーに乗ってくれるなら、より自由な競争で、勝ち残るところだけが残って(他の事業者が)淘汰(とうた)されるのでは。厳しいですけど、そういう覚悟は出来ています」

 一方、国側は、「国の主張が一部認められなかったことについては残念に思います。今後については判決の内容を検討して、関係機関と協議の上判断いたします」とコメントしている。

 同様の裁判は各地で起こされているが、今回、司法がタクシーの格安運賃を認める判断を下した。競争が激化するタクシー業界。今後、どのような展開を見せるのか。