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油井さん宇宙へ!家族の絆でつかんだ夢

2015年7月31日 17:29
油井さん宇宙へ!家族の絆でつかんだ夢

 7月23日、宇宙飛行士・油井亀美也さんを乗せたロシアの宇宙船ソユーズが無事に打ち上げられ、国際宇宙ステーションとドッキングした。打ち上げを通して見えた“家族の絆”を、山内康次記者が取材した。

 大きな音とともに国際宇宙ステーションへと打ち上げられたロシアの宇宙船ソユーズ。到着後、姿を見せたのは日本人宇宙飛行士・油井亀美也さんだ。1970年に、長野県のレタス農家に生まれた油井さん。子供のころ、夜中にレタス畑に連れて行ってもらい、天体望遠鏡で夢中になって星空を見上げていたという。実家を取材した際、油井さんは「もう古いですけど。小学校3年生の時に買った望遠鏡ですね」と、その望遠鏡を見せてくれた。父親は油井さんの子どもの頃をこう話す。

 「『絶対に新しい星を見つけるぞ』と、よく望遠鏡をのぞいていたね」

 小学校の卒業文集では、勉強して20年後には火星に行っていると、宇宙飛行士になる夢をつづっていた。その後、航空自衛隊の戦闘機のテストパイロットを経て、2009年、39歳の時に過去最高齢で宇宙飛行士の候補に選ばれた。

 打ち上げの2日前、バイコヌール宇宙基地から車で約30分の所にあるホテルの前に、父親ら家族の姿があった。打ち上げ前の会見を、あたたかいまなざしで見守る油井さんの父。会見で油井さんはこう語っていた。

 「私にとっての父は、一生懸命働く姿を見て育っていますから、目標なんですね人生の。家族の支えがないとなかなかここまでたどり着けないので、家族に対してはありがとうと述べたいですね」

 そして迎えた打ち上げ当日。出発前、油井さんはホテルの部屋のドアにサインをした。歴代の宇宙飛行士が必ず行うというゲン担ぎだ。その後、いよいよ宇宙基地へと向かう。油井さんは宇宙服に着替え、家族と面会。そして、宇宙船へ乗り込んだ。

 この日、打ち上げを取材したメディアは約80人。実は、この場所に宇宙船ソユーズの打ち上げを特別な思いで見守っている人がいた。クリエイティブディレクターの高松聡さんだ。高松さんは、民間人として日本人初の国際宇宙ステーションへの宇宙飛行をめざし、ロシアで訓練を受けている。高松さんはその思いをこう話す。

 「星の町(訓練センター)で一緒に訓練してきた油井さんが乗っているということと、自分が7か月訓練してきたソユーズが目の前にあるので感慨ひとしおというか、打ち上がる前からちょっと感動してます」

 打ち上げの瞬間。宇宙船ソユーズはゆっくりと空へ昇った。ソユーズが軌道に乗り打ち上げが成功した直後、油井さんの父が取材に応じてくれた。

 「『20年後に火星に行ってる』なんて言っていた少年が、本当に宇宙へ行ってしまいました。スーパーマンになっちゃったんだと思って感激しました。私も尊敬します、息子を」

 国際宇宙ステーションに到着した油井さんは、家族と言葉を交わした。父親が「お父さんです。打ち上げ、すごい感動しました。そちらの気分はどうですか?」と聞くと、油井さんはこう答えた。

 「飛行も順調だったし、地球がやっぱりすごいきれいで、本当にね、これをみんなに見せてあげたいなと思うんだけど。少しずつカメみたいに一歩一歩慣れていって、仕事がしっかりできるように頑張ります」

 日本に帰国する直前の油井さんの父に、子育ての秘けつを聞いてみたが…。

 「本人が努力した結果ですよ。本当に格好良かった」

 お互いに尊敬する油井さん親子。宇宙船ソユーズの打ち上げを通じて、家族の絆の素晴らしさを改めて感じた。