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箱根山で何が? 気象災害担当記者が解説

2015年5月4日 21:38
箱根山で何が? 気象災害担当記者が解説

 神奈川県の箱根山で先月下旬から火山性の群発地震が増えている事から、箱根町は4日から大涌谷周辺のハイキングコースへの立ち入りを禁止するとともに、気象庁などが現地調査を行った。箱根の観光スポット・大涌谷周辺で何が起きているのか、日本テレビ社会部気象災害担当の中濱弘道記者に聞く。

 Q箱根の地下では、いまどのような事が起きているのか?

 異常が起き始めたのは先月26日頃で、体に感じるような地震ではないが、地震活動が活発になり始めた。先月28日には、1日に146回の地震が起きた。箱根では年間平均200回程度の地震があるので、いかに多くなったという事が分かる。

 さらに、山がわずかに膨らむ地殻変動が観測され始める。地下深くにあるマグマによって浅い所にある熱い地下水が膨張する。これに合わせて箱根山がわずかに膨らむという観測データが見つかった。

 Q御嶽山噴火のように水蒸気爆発の危険性は考えられるのか?

 気象庁をはじめ地元の研究機関も、今すぐにあのような噴火が起きるとは考えていない。ただ、3日になって大涌谷にある温泉を掘る井戸から出る水蒸気の量が多くなっているのが見つかった。

 地震、地殻変動、そして異常な噴気活動と3つの危険要素がそろった事で、気象庁は3日に注意喚起情報を発表し、箱根町も大涌谷周辺の立ち入り規制を行った。

 Q箱根では、こうした現象は珍しいものなのか?

 これまでも、箱根では2年前に1か月で1000回を超える地震があった。また、2001年にも今回と同様に温泉井戸から水蒸気が勢いよく出るということがあった。近年はこうした現象を繰り返しているが、これまで噴火に結びついたことはない。

 Qいつごろまで続くのか?

 Aまだ群発地震が始まってから1週間程度ということで、神奈川県温泉地学研究所は「今後の見通しを判断するにはまだ早すぎる」と話している。箱根の群発地震は1か月や2か月で終息したこともあれば、半年くらいかかったこともあり、注意深く監視をしたいとしている。

 Q注意点は?

 A今回は町などが早い段階で立ち入り規制を設定した。大涌谷の遊歩道や周辺の登山道などが対象。こうした場所では、突然、高温の水蒸気が噴出したり、それにともなって石や土砂などが飛ぶこともあるので、この規制範囲を解除されるまで守ることが大事。

 Qこれから夏山を迎え、標高が高いため、観光には適した季節になるが?

 Aまさにゴールデンウイークは1年の中でも観光客が一番多くなる時期で、町や観光業者など関係者はやはり痛手ではあるが、去年の御嶽山の教訓をいかして早めの対応ができたと箱根町の幹部は話している。

 箱根では神奈川県や箱根町、気象庁、警察、観光業者などで構成する箱根火山防災協議会という組織があり、平常時から火山防災について議論を進めてきた。

 そして3月末、御嶽山噴火を教訓に、大涌谷周辺で突然の噴火があった場合に観光客を避難誘導するマニュアルを作成したところだった。さらに先月28日、避難指示を観光客に伝える訓練を行ったばかりだった。

 こうした日頃から連携もあり、異常な現象が見つかった3日に即座に立ち入り規制を判断できたという。活動はまだ始まったばかりと言うことで、今後も注意が必要だ。