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震災から丸4年「液状化」対策、関東の現状

2015年4月14日 23:07
震災から丸4年「液状化」対策、関東の現状

 東日本大震災が発生した際、広い範囲で発生した液状化現象。市街地で液状化が今後起きないよう、対策が関東地方でも進められている。ただ、工事が進む自治体の一方で、工事の準備段階という自治体が多いのが現状だ。震災から丸4年、差はなぜ起きているのか?現状を取材した。

 「液状化」対策の工事が進められている茨城県潮来市日の出。潮来市では「東日本大震災」で震度6弱を観測し、市内6か所で液状化現象が確認された。中でも日の出地区の被害は地区全体の約200ヘクタール。市内で被害がもっとも大きかったことから、市は2012年2月に、有識者による工事方法の検討委員会を発足。検討や実験などを重ね、2013年6月に工事が始まった。その間、1年4か月。

 潮来市秘書政策課長(3月まで)・川井恒夫さん「検討委員会の立ち上げから始まり、実証実験、地元への説明会を踏まえ、同意の取得、対策事業に入った。すべてが同時進行のような形で進んでいった。その期間は、ボリューム的にないけど厚みがあった。そんな中でよくできたと思う」

 潮来市は、自治体の中ではもっとも早く液状化対策工事が始められたという。現在、進捗(しんちょく)率は約6割。

 関東地方で「市街地液状化対策事業」を進める自治体のうち、工事が行われているのは潮来市と、同じ茨城県の神栖市の一部だ。多くの自治体では、工事に向けた準備を進めている段階だという。着工に時間がかかっている理由は何だろうか。

 液状化対策の工事に至るまではまず、道路やライフラインの復旧工事をへて、原因の究明や地盤調査、専門家を集めての検討委員会などを数回重ね、工事の実証実験などを行う。自治体によっては、それぞれの作業に1年以上の時間を要した。その間、住民説明会や住民の同意を得ることも必要で、この作業に時間をかけたという自治体もある。

 さらに別の理由もある。千葉県北部の香取市では、市内全体で3500ヘクタール、うち、市街地では140ヘクタールで液状化の被害が確認され、街の復旧工事を行いながら、液状化対策の検討が始められた。今までにない広範囲な液状化災害に、当初、何が有効な工法なのか具体的な目安がない状況だったことが、対策工事を始めるまでに時間がかかった理由だとしている。

 香取市建設水道部参事・堀内輝亮さん「工学的知見というところがない中で、手探りでやっていかなくてはという中、工法をこれできちっと対策ができるんだと決めていくのに多くの時間や労力がかかった」

 香取市は2012年11月から1年間、有識者による対策検討委員会を7回開催して、工事方法を選定した。現在、工事の詳細な計画設計に住民の同意が得られた市内2か所で、綿密な地質調査などを実施しているが、具体的な工事の時期は未定だ。

 香取市参事・堀内さん「集中復興期間というのは平成27年度いっぱいと言われているので、そこまでの時間は、今の段階ではタイトな状況であることは確かだと思います」

 費用面もネックになっている。埼玉県東北部の久喜市内の南栗橋地区では、36.6ヘクタールにわたり液状化が発生した。震災直後から実証実験や住民説明などを経て、工事に向けた地盤調査が今年1月から始まった。住民が生活する中での工事は厳しいとしながらも、液状化対策工事を今年度中には完了させたいとしている。しかし、その費用が市の例年の建設関連予算の約8割に相当し、国の支援を受けなければ市の単独での工事は難しいとしている。

 液状化対策に関わる事業の予算は、各自治体とも復興事業を支援する国からのお金、復興交付金でまかなっている。ところが、復興事業に関わる予算が国からすべて交付される「集中復興期間」が、今年度末で終了。予算が確保できなければ、工事が行えなくなる恐れもあることなどから、各自治体では、来年度以降も支援の延長を要望している。

 今年2月にも、市街地の液状化対策を進める自治体10市の市長らが関係省庁などを訪問。復旧・復興への長期的支援と地籍の混乱への対応を要望した。

 潮来市秘書政策課長(3月まで)・川井恒夫さん「何百億という工事ですから、市の予算ではできない。国に要望していかないとできない。他の自治体も一緒。きのう(2月24日)の要望も一緒で、復興交付金をさらに次年度以降もいただきたい、期間を延ばしていただきたいというのが自治体の切なる願いです」

 今年3月の会見で、「集中復興期間」が終わる来年3月以降の復興支援の枠組みを今年の夏までに取りまとめる方針を示した安倍首相。復興交付金は来年度以降どうなるのか。その財源は?復興庁では、「復興の進捗状況を踏まえ検討していく」としている。