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モーターショー エコより“高級・大型”?

2015年1月30日 15:10
モーターショー エコより“高級・大型”?

 アメリカ・デトロイトで、世界最大級のモーターショーが開かれた。エコカーで世界をリードする日本車メーカーが、今回、出展した車は大型車や高級車ばかりだった。背景に見える“アメリカならではの事情”を、木村真二郎記者が取材した。

 世界初公開の車など、約750台が出展された“北米国際自動車ショー”。近年のモーターショーで主役のエコカーは影を潜め、アメリカ市場で需要が高まる高級車が目立った。ホンダは1800万円以上する高級スポーツカーを披露。そのほかの日本車メーカーは大型車を前面に押し出した。日産とトヨタは、ともに約10年ぶりにモデルチェンジしたピックアップトラックを投入。日本ではあまり見かけない車だが、そこに、アメリカならではの戦略があると言う。トヨタ北米の技術責任者はこう語る。

 「アメリカでは乗用車の販売台数の半分をトラックが占めています。その地域に住む消費者に合った車を開発するようにしています」

 景気の拡大が続くアメリカ。去年の新車販売台数は、8年ぶりに1650万台を超えた。雇用の回復とガソリン価格の急激な下落により、ピックアップトラックは販売台数を大幅に伸ばしている。しかし、上位3位を独占しているのはアメリカのメーカー。そこに、日本車メーカーも食い込もうというのだ。自動車ジャーナリストの桃田健史氏が、米自動車市場の現状をこう教えてくれた。

 「ガソリン価格がいま下がっていますから、エコカーが売れません。その代わりにスポーツカーや大型のピックアップトラックに大きく動いているのが現状です。メーカーにとっては非常に利幅が大きい“おいしい”ビジネス。“ドル箱ビジネス”に本格的に戻ってきたというイメージが強いですね」

 アメリカでいま、車が売れている理由を探るべくニューヨーク市内の自動車販売店をのぞいてみると、平日にもかかわらず客が次から次へと訪れていた。自動車ローンの金利が下がっていることも追い風となり、この店では去年1年間の車の販売台数が、おととしの2倍に伸びたと言う。車の購入を決めた客に話を聞くことができた。

 「ガソリンの価格は下がっているし、アメリカ経済は改善している。以前住んでいた家が売れたので、そのお金で私と妻それぞれの新しい車を買う」

 さらに、販売店の担当者はこう話す。

 「いま、お客さんは燃費について心配していない。前年と比べると皆さんがたくさんのお金を使う。前年に買えなかった物(車)を買っている」

 また、今月上旬にデトロイトを訪れたオバマ大統領は、自動車産業が景気回復を導いていると強調。「アメリカの復活は本物だ」と述べた。

 ヨーロッパのメーカーも、価格の高いSUV(=多目的スポーツ車)など大型車の新しいモデルを相次ぎ披露し、華やかなショーとなった今回。一方、アメリカのベンチャーメーカーは、アメリカが世界を先導する“ある技術”を使った車を初めて出展した。登場したのは一見シンプルな電気自動車だが、世界初の車だという。なんと、3Dプリンターで作られた車だ。車体は強化プラスチックでできているが、メーカーによると、一般の車と同じくらいの強度はあるということだ。大型の3Dプリンターを使えば、車体を作るのは40時間あまり。モーターや車輪などと組み合わせ車1台を完成させるのは、わずか6日だと話す。この車を披露したローカルモーターズのCOO(=最高執行責任者)はこう語ってくれた。

 「私たちはどんな種類の車も作ることができて、地域(個人)に合った少数生産にたけている。一般的な自動車の製造と比べ、デザインの変更などがすぐにできる」

 3Dプリンターが及ぼす自動車産業界への影響を、桃田氏はこう話す。

 「自動車産業界では、いま3Dプリンターによる“産業構造破壊”が言われていて、工場がいらなくてディーラー(販売店)で車を作ることができる。事故で部品が必要になった時も、ディーラーが部品を作ることができる」

 早ければ、今年中にも3Dプリンターカーを1台200万円から350万円ほどで販売したいと意気込むローカルモーターズ。開発競争が激しさを増すアメリカ市場で、日本車メーカーはさらに市場を拡大することができるのだろうか。