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日中関係改善へ…「試練」となる2015年

2015年1月4日 18:04

 安倍首相が2013年末に靖国神社を参拝し、最悪の状態で始まった2014年の日中関係。しかし、11月に2年半ぶりとなる日中首脳会談が実現し、ようやく関係改善に向けて動き始めた。12月には日中の有識者らによる「新日中友好21世紀委員会」の正式会合が3年ぶりに開催され、李克強首相とも会談するなど要人との意見交換も増えている。

 習近平国家主席は2014年12月13日、日中戦争中に多くの中国人が殺害されたとされる南京事件の追悼式典で演説。「日中両国民は代々友好を保ち、歴史を鑑(かがみ)として未来に向けてともに人類平和のために貢献しなければならない」と述べ、日本との関係に配慮を示した。姿勢変化の背景には、日本から中国への投資が減るなど関係の悪化が経済に影響を及ぼしていることもあるとみられる。ただ、習主席は「侵略戦争の歴史を顧みない言動」に警戒感と反対の姿勢を強調、日本側の歴史認識をけん制することも忘れなかった。

 日中関係が専門の梁雲祥教授(北京大学)は「習近平政権は実際のところ、日中関係を改善したい。しかし、その大前提は日本側が歴史を正しく認識することだ」と指摘する。関係改善は、歴史認識をめぐる日本側の姿勢次第というわけだ。

 2015年は、その「歴史認識」がクローズアップされる年となる。「終戦70年」という節目を迎えるからだ。習近平政権はこの記念の年に向けて様々な布石を打ってきた。「抗日戦勝記念日」と「南京事件追悼日」を2014年に国家行事に格上げし、大々的に式典を開催。6月にはいわゆる「従軍慰安婦」と「南京事件」の資料を国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の「世界記憶遺産」に登録申請した。また、ロシアのプーチン大統領や韓国の朴槿恵大統領には、戦勝記念行事などでの連携を呼びかけた。習近平政権は様々な機会を用いて「終戦70年」を盛り上げていこうとしている。

 一方で、別の狙いもあるようだ。現代中国政治が専門の高原明生教授(東京大学)は「今、中国社会では汚職や環境汚染、権力乱用などの様々な問題に対する不満があり、ナショナリズムを使って国民をまとめていこうとする動きがある」という。民族主義や愛国心を高めることで、国民の不満をそらしたいというのだ。

 注目されるのは「戦後70年」に際して安倍首相が出すことにしている「談話」だ。戦後、日本が平和国家として歩んできたことを強調し、未来志向のメッセージを出すことで関係改善を促したい考えだが、「過去」への十分な言及なしで習政権を満足させるのは難しいという指摘もある。

 では、まずできることは何なのか。梁教授は「首脳レベルで危機や衝突が起こらないよう管理・コントロールしながら、各レベルでの交流を進めていき、できるだけ日中共通の利益を見つけ出していくことだ」と話す。不測の事態を防止するためのメカニズム作りは去年11月の首脳会談で「事務レベルで進めていく」ことになっているが、進展は見られない。こうした懸案で対話を積み重ねながら、「戦略的互恵関係」という原点に立ち返ることができるのか。「終戦70年」という大きな試練を乗り越えて、「対立」から「協力」の関係へ転換していけるかどうかが試される年になりそうだ。