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地球温暖化対策 新たな一歩を踏み出す年に

2015年1月3日 16:13

 2020年以降の温室効果ガス排出量削減に関する国際枠組みを決める会議が、2015年に行われる。会議では、先進国だけでなく途上国も含めた全ての国が温暖化対策に参加する初めての枠組みが合意されようとしている。この会議に日本がどのような姿勢で臨むか注目される一方で、省エネなどの高い環境技術を武器に温暖化対策に貢献しようとしている。

 2014年は世界各地で干ばつや洪水など異常気象が発生した。世界の平均気温も平年を0.27℃上回って1891年の統計開始から最も高くなる見通し。国内でも広島市で局地的な豪雨による大規模な土砂崩れが起き、74人が死亡したほか、普段雨の少ない北海道でも大雨特別警報が発表された。極端な気象現象の背景には、地球温暖化の影響があると指摘されている。

 その地球温暖化の主な原因である温室効果ガスの排出量について環境省は、2013年度の国内の排出量速報値を発表した。東京電力・福島第一原発の事故以降、全国の原発が停止して、より多くの二酸化炭素を排出する火力発電所をフル稼働させているため、排出量は約13億9500万トンと過去最高を更新した。

 そんな中、2014年に南米ペルーで開かれた気候変動枠組み条約第20回締約国会議(COP20)では世界190以上の国と地域が参加して地球温暖化対策が話し合われた。COP20に先立ち、世界最大の温室効果ガス排出国の中国は2030年頃に排出量を減少に転じさせると発表し、第2位のアメリカも温室効果ガスを2025年に2005年比で26~28%減らすとした積極的な目標を明らかにした。しかし、望月環境相は「2050年までに先進国で80%減という目標を掲げて貢献する」とする発言にとどまり、日本の具体的な削減目標には一切触れなかった。

 この日本の消極的な姿勢の背景には、国内のエネルギー政策の議論が進んでいない事がある。政府は国内の発電量に占める原子力発電や再生可能エネルギーの割合を決められず、温室効果ガスの具体的な削減目標数値も宙に浮いた状態だ。COP20は期間を2日延長したが、途上国を含む全ての国が新たな温暖化対策の枠組みに参加する事や、可能な国は2015年3月までに、これまでよりも進んだ温室効果ガスの削減目標案を提出する事などで合意した。

 そして、2015年11月末にフランス・パリで開かれるCOP21では、いよいよ全ての国が参加する2020年以降の温暖化対策の枠組みが決まる事になる。大胆な削減目標を打ち出すアメリカや中国、ヨーロッパ各国に比べて国際交渉では一歩遅れをとる我が国だが、日本の持つ高い環境技術は注目されている。

 日本政府はこれを活用して巻き返しを図ろうとしている。それが2国間クレジット制度だ。日本の優れた環境技術を途上国に提供して削減できた温室効果ガスの排出量を逆に日本の削減分として取り込む事ができるものだ。2014年末までに、モンゴルやインドネシアなど12か国に日本の省エネ技術を利用した高効率の空調システムや温室効果ガスの少ない発電機などを提供して、2国間クレジット制度を合意した。

 これまで原子力発電に依存した温室効果ガス削減策を進めてきた日本だが、政府はこれまで以上に省エネや優れた環境技術をうまく組み合わせて温暖化対策に貢献したいとしている。国連の予測では温暖化対策を行わなかった場合、今世紀末には世界の気温が4℃上昇し、巨大台風の接近や、干ばつ、洪水の多発など、私たちの生活にも深刻な影響を及ぼす恐れもある。私たちも、温暖化問題に真剣に向き合わなければいけない時が来ている。