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新憲法に民政移管…どうなる、軍政下のタイ

2015年1月2日 20:58

 2015年、タイは軍政下で新年を迎えた。最大28万人が参加した反政府デモと、一向に沈静化できない政府…。2014年前半まで続いた政治的混乱に終止符を打ったのは軍だった。

 タイでは、軍が王室と並んでしばしば“バランサー”の役割を果たしてきた。政治的混乱を収束させるためにクーデターを繰り返してきた歴史がある。立憲君主制への移行後82年間で未遂も含めると実に19回ものクーデターが起きている。今回の政治的混乱も“既定路線”での決着を見たとも言える。

 クーデターを主導したプラユット前陸軍司令官はそのまま暫定首相に就任、軍政の長として君臨し続けている。プラユット氏は過去のクーデターで批判された流血での事態収拾を回避した。「タイ国民に幸福を取り戻す」を旗印に、連日各地で無料の炊き出しや軍人によるステージイベントなどを繰り広げている。そんな懐柔策が功を奏しているのか、2014年12月の世論調査では75%の人が「次の首相にもプラユット氏を推す」と答えている。世論調査の結果が示す通り、政治的混乱は表面化しておらず、市民生活も平穏に見える。

 ただ、戒厳令はいまも解除されておらず、軍の意向に沿わない報道を禁じるメディア規制も続いている。クーデターで倒れた前政権の支持層の不満が、いまも解消されていないことの裏返しとも言えよう。インターネット上では軍政継続に反対する市民運動も呼びかけられており、市民が拘束されるケースも散発している。2015年はこの軍政を終わらせることができるかが焦点となる。

 就任直後、プラユット暫定首相は2015年中に新憲法を制定して総選挙を行うと語り、早期の民政移管に意欲を示していた。2014年11月に発足した憲法起草委員会は3月にも新たな憲法の草案をまとめるという。しかし、民政移管の前提となる総選挙については、一部の閣僚が2016年にずれこむと消極的な発言をしている。また、プラユット暫定首相も「もう少し見守ってほしい」と軍政継続を示唆する発言をするようになった。軍政トップの「待った」は、軍の統制が当分続くのではないかとの不安を募らせる。

 タイに拠点を置く旅行代理店によると、日本からの旅行客はクーデター以降少しずつ戻りつつあるものの、戒厳令や軍政への不安の声や問い合わせは依然減らないという。クーデターという非民主的な手段で政権を奪取した軍政が、国際社会から容認されないのは言うまでもない。国内外の不満・不安を解消するには、一刻も早く民主的な選挙を行うことが必要だ。

 「タイ国民に幸福を取り戻す」を標ぼうするプラユット暫定首相。「タイに世界の信頼を取り戻す」ためにも彼自身の行動が問われる1年になる。