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任期終盤、課題山積、オバマ外交見通しは?

2014年12月30日 14:33

 来年、アメリカではオバマ大統領が任期の終盤に入る。イスラム国との戦いなど課題が山積するアメリカ外交の見通しについて、ワシントン支局・近野宏明記者が報告。

 19日に仕事納めの会見を行ったオバマ大統領。アピールしたのは改善を続ける国内の雇用情勢だった。

 オバマ大統領「どの指数を見ても、アメリカの復活は本物。生活は良くなっている」

 しかし、11月の中間選挙では順調な国内経済という追い風を生かせず大敗。その大きな理由が「外交」だ。この1年間、アメリカの威信の低下は止まらなかった。ウクライナ問題ではロシアに歯止めをかけることができなかった。制裁に「効果がある」と強調するものの、クリミア半島の併合は固定化され、返還される見込みはない。イスラム過激派組織「イスラム国」への対応でも後手に回った。プロバスケットボールチームの「二軍」に例えるなど、その脅威を過小評価していたのだ。

 来年のアメリカ外交で最大のテーマとなるのはこの「イスラム国」対策だ。「我々は有言実行だ。広範囲に目を光らせている。アメリカを脅かす者に安住の地はない。必ず見つけ出す」-オバマ大統領は「有志連合」による包囲網作りを進めているが、空爆だけに頼る今の手法には限界がある。

 特にシリアでは元々、「イスラム国」と敵対するアサド政権の打倒を目指していただけに明確な戦略が求められるが、専門家は手厳しく批判する。ブルッキングス研究所のオハンロン上級研究員は「2015年、イラク情勢が改善される可能性は大いにあるが、シリア情勢改善の可能性は残念ながらゼロに近い。我々にはまだ正しい戦略がないので、時計の針は動いてすらいない」と話す。

 一方、映画会社へのサイバー攻撃について、アメリカは北朝鮮の関与があったと断定した。核や人権といったこれまでの問題とは全く異なる対立軸。オバマ大統領は「国の安全保障上の問題」と位置付け、テロ支援国家への再指定も含め検討を進める考えを示したが、中国やロシアの協力を取り付けなければ北朝鮮から譲歩を引き出すのは困難だ。

 内政での「レームダック化」が避けられない中、オバマ大統領は残りの2年間の任期で「歴史に名を残す」ことに情熱を傾けているように見える。その典型が半世紀以上断交していたキューバと国交正常化交渉に入るという発表だ。

 オバマ大統領「この50年以上で最も重要な変革として、国益を促進できなかった時代遅れの手法を終わらせる」

 また、アジアでは自らのリーダーシップでTPP(=環太平洋経済連携協定)を合意に導き、存在感を示したいところだ。

 しかし、ネックになるのは国内政治だ。中間選挙での大敗の結果、新年からは議会の上下両院で共和党が過半数を握るため、保守・強硬論に配慮せざるを得ない。議会対策はオバマ大統領の不得意な分野で、次の大統領選挙も控え協力を取り付けるのは容易ではない。

 対話と理念を重んじ、力による秩序には否定的だったオバマ大統領の外交は強い野党の存在によって変わっていくのか。2015年は大きな意味を持つ年になる。